食物の多様性を守るため、世界中の種子を集めて保護する科学者たちの物語。成毛ブログで絶賛されていたので、読んでみたけど確かに面白い。一気に読んでしまった。
■多様性が失われた種はもろい
昔の貴族は親戚やいとこ同士で結婚することもあったので、遺伝子的に子孫に障害が生まれることが多かったと聞いたことがある。馬ゲームのダビスタでも、血が濃すぎる配合を選ぶととたんに怪我がちな子馬ばかり生まれる。
これは血が濃すぎる配合のデメリットだけど、遺伝的に特定の環境に有利な配合を繰り返した結果、遺伝子の多様性が失われると、突然の疫病で一気にすべての生物が絶滅してしまう恐れがあるらしい。
これが現在の、品種改良を重ねられて特定の品種しか世界で育てられていない小麦などの栽培物に当てはまる。この本は、来るべき人類の危機にそなえ、世界中の食物の種子をジーンバンクという地下シェルターのような場所に集めることに命をかけた科学者たちの話。
■将来、人間の多様性もなくなると一気に絶滅しちゃうかも
現在は遺伝子治療や、遺伝子を選んで子供を産んだりといったことはまだ一般的ではないけれど、そういった世の中になった時の危険性がこの本を読むとよくわかる。未来の世界を描いた映画「ガタカ」では、人間はみんな遺伝子を調整されて美男子、美女ばかりの世界だった。
でも、こういう世界で突然疫病が発生すると、一気に人類が絶滅してしまう危険性があるんだなあと思った。とにかく、多様性というのは会社でも、どんな場所でも重要だとよくいわれる。でも、今まではいろんな意見があって、いろんな人がいたほうがいいんですよねみたいな感覚でしかわかってなかった。
でも、生物界の群れのルールとか、多様性を失った小麦が一気に全滅する話とかを聞くと、科学の世界の実際の知見がわかって多様性の大事さがよくわかっていい。
■PRの重要性もよくわかる
本書の主人公のスコウマンは、当初とにかく世界から飢餓をなくすという思いだけで活動していた。その時、まったくマスコミ向けのPRには力をいれていないけど、晩年になってようやくその重要性に気づく。とにかく、全世界の一人でも多くの人が、多くの食物の種子を守るという重要性に気づかないと人類の危機だと気づくかないと、失ってからではもう遅い。
となると、最近はやりのエバンジェリストという職業の大事さも痛感するなあと思った。研究者と、その功績を世に広める人が必要なんですね。