【書評】国際紛争―理論と歴史


拷問読書今週1冊目。累計50冊目。国際社会において紛争の起こる原因は何なのか、このことを国家間の力関係や時代背景を元に解説していく本。教科書みたいで読みやすい本ではないのですが、紛争のメカニズムを知ることができます。

●バランス・オブ・パワー



国際紛争の背景にはバランス・オブ・パワーのメカニズムが潜んでいる。この部分で面白かったのが、必ずしも強い国に協力するという構造がすべてではないこと。例えば、ドイツが強くなりすぎることを恐れ、アメリカがドイツと敵対する小国を援助したりする。

「国家がパワーをバランスさせようとするのは、平和を維持しようとするためではなく、自らの独立を維持しようとするからである。」

国家紛争の歴史は、バランス・オブ・パワーの歴史かもしれないです。上記のことは、利己的に動くことによって、結果的に国家間のバランスが保たれているという意味で面白かった。

例えば、世界が1つになるにはどうすればいいか?という問題も、大きな敵を作ればすぐ解決しますな。映画「インデペンデンス・デイ」のように、宇宙人が地球を侵略してきたら世界中が協力せざるを得なくなります。

つまり、お互いに協力したほうがよいという仕組みを作り、経済的にも相互にもちつもたれつつの関係を作りだすのが世界平和に繋がるんではないかなと。グローバル化の進展し経済的な協力体制が高まるにつれ、戦争のコストが高くつくという考え方は「フラット化する世界」でも書いていました。

異なる文化や宗教があるから争いが起こるのだという考えもありますが、協力したほうがお得だという価値観を共有すれば、結構合理的に人間は動くものだと思うのです。

●日本がアメリカに戦いを挑むのは合理的だったのか?

第二次世界大戦において、冷静に考えて勝てそうにないアメリカに対してなぜ日本が戦争をしかけたか。アメリカは負けると分かっていて日本は戦争に突入しないだろうと考えていたようです。

「日本人が合理的なら、アメリカへの攻撃は日本の破滅以外の何者でもないことは明らかだ」と当時のアメリカの国務次官補も言っていたようです。

ただ、アメリカは日本への石油の禁輸措置によって日本の南進を阻止しようとした。当時の日本は石油の9割を輸入に依存していたので、戦争を始めるほうが徐々に絞め殺される

よりもましだと日本は決断したと書かれています。

この部分を読んでいて感じたのは、追い詰められると北朝鮮は何をするかわからない。そう思わせるのが北朝鮮の最大の武器であり、厄介なところだなということです。戦争を起こすことが不合理になるような逃げ道というものを作っておくのは重要なのですが、そこに付けいれられる可能性もあったり。

●新しい世界秩序

あらゆる人種や宗教が混沌とする世界で、世界政府の樹立は現実的でない。世界平和を目指す上でなにが決めてになってくるかというと、自分としては情報の共有と経済的な相互依存ではないかと思っております。

簡単にいうと、喧嘩の主な原因は意思疎通の欠如だったり、お互いの誤解から生じるものだったりが多いものです。そういう意味で、インターネットが普及して情報の共有が簡単になっていく世界では可能性はあるのでないかと。

もう1つの経済的な相互依存。お互いに争うと今まで培ってきた経済的な相互関係が失われてしまうという状態が世界中で起これば、自動的にそれが戦争抑止の力として発達していくのではないかと。