【書評】さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白


拷問読書

今週3冊目。累計85冊目。郵政民営化、公務員制度改革などを推し進め、財務省を完全に敵に回した男の告白本。官僚社会や当時の政治改革の裏話を包み隠さず語っていて、相当読み応えがある。

官僚体制を徹底的に批判し、当時の郵政民営化や公務員制度改革案に反対した人たちへの反論も理にかなってておもしろい。竹中改革の政策チームに関わっていた時から、財務省へは戻れない状態だったらしいけど、そうであるからこそこういう本も出せたのだと思う。

それもこれも、財務省に戻れなくなっても未練がないという立場があってこそ。組織に属さなくても生きていけるほど実力がある人は強いなと感じる一冊。もともと旧体制派に相当恨まれているのに、こんな本出してしまったらヤバイんじゃないかと思うぐらい暴露している本です。

現在は大学の教授をしているんだろうなと思ってネットで著者の名前を検索したら、先月に置き引きで書類送検されていた!本人は容疑を認めているみたいだけど、恨みを買った組織にはめられたんじゃないかと疑ってしまうのは自然の流れ。

ホリエモンや手鏡で有名になった植草さんは容疑を認めず徹底抗戦しましたが、高橋さんの場合は容疑を認めたほうが被害が少ないと判断したんじゃないかなあとうがった見方をしてしまう。

罪を認めれば軽犯罪として扱ってすぐ釈放される。もし徹底抗戦したらしばらく抑留され、精神的にもまいらされたあげく、裁判が長引き懲役の危険もあり。こんな条件でしぶしぶ罪を認めたんじゃないかと。

とまあ、こんな妄想をかき立てられるぐらいこの本の内容はヤバイ。改革案を推し進めた小泉元首相のバランス感覚や、財務省の圧力と真っ向から対決した安倍元首相の話もおもしろい。

■天下りを阻止する公務員制度改革案

著者の高橋さんが最も力をいれ、阿倍元首相も改革の骨組みとしていた公務員制度改革案。旧体制派にもっとも恨みを買ったのもこの改革がらみなのは間違いない。

簡単に説明すると、官僚が民間に再就職する時の斡旋制度を作り、優秀な官僚は民間に再就職しやすくし、高給な省庁にいつまでも居座り続けることができないようにする制度。かといって、民間からの需要がない元官僚は職にありつけないようになるのがミソ。

官僚と民間の相互の人事異動をもっとしやすくし、元官僚であっても本人に対しての需要がなければ民間に再就職できなくするという公務員改革制度。

この制度に対する問題は、天下りを完全禁止すると優秀な人材が官僚になりたがらないだろうという反対意見がいつもあるようです。これに対して著者は、「官僚を目指す若者たちは天下りなどをあてにして省庁に入ってこない。入ってから天下れるように心が腐っていくのが実際だ。」と反論していた。

ここだけはちょっと自分の意見とは違ったりします。例えば、天下りが完全に規制され、圧倒的に外資や大企業に行ったほうが将来の待遇がよくなるという状況になるとする。この状況になれば正義感あふれる若者であっても将来の待遇の歴然とした差を考え、省庁に就職することをためらう人も相当出てくるのではないかと。

とはいっても、民間と省庁という2つの職場の移動をもっとしやすくし、官僚になったとしても需要さえあれば民間で再就職しやすい制度になれば、官僚を目指す若者も減らないと思うので制度自体はすごくいい!

残念ながら安倍政権が倒れ、この改革案が実現するのは難しそうな気配のようです。官僚制度やその体質、郵政民営化の舞台裏を知れるお勧めの本でした。高橋さん逮捕の真相が非常にきになる。。あれほどの立場の人が、高そうな時計だからって単純に盗もうとはしないと思うんですがね。