【書評】発想の視点力


拷問読書

三谷さんの書く本は基本的にハズレがない。なんで面白いのだろうかと考えてみると、物事の見方の広さや深さが半端ないからだと思う。しかも、堅苦しいビジネスの話も宇宙の話やらSF小説の話やら、歴史建造物の話やらの雑学をからめて楽しく解説してくれる。

本書「発想の視点力」は新しい視点を持つことに焦点を絞っています。たいてい人は直感的に物事を判断して、しっかりと物事を分解して比べてハカルことをしない。この本では、いろいろな比べ方、ハカリ方、深掘りの仕方を解説しています。

例えば、街頭調査ではバイアスがかかりがちな人の意見ではなく行動をハカルとか、統計では異常値に注目して比べるとか。このへんは少しばかり眠たくなる統計の話が出てくるのですが、今年の9月までインターンで通っていた「Midee」という顧客行動分析のベンチャー会社を思い出した。

この会社では、スーパーなどのカメラ映像から、顧客行動を分析して、まさに本書で書かれているような「買わなかった顧客」の行動統計を提供するサービスを行っています。このサービスを展開するうえで、営業先にデータの価値を分かってもらうのが一番難しいところなのですが、本書を読めばかなりの部分まで理解してもらえそうだなと読んでて思った。

三谷さんの本だと、前作の「正しく決める力」のほうが全体像のつかみ方みたいなイメージで、「発想の視点力」は具体的な方法のような気がする。そういう意味では、「観想力」とちょっと似ている。「PTA会長がトップコンサルタントをやってみた」は子育て本なので、誰かに教える時のヒントがちりばめられています。

一番おもしろいのは間違いなく「突破するアイデア力」。これを初めて読んだ時は衝撃的ででした。何げなく自分たちが目にしている事を、ここまで深く掘り下げて考える人がいるのかとびっくりした。五重の塔がなぜ作られたかをあそこまでドラマチックに解説してくれる人はいません。「湾岸ミッドナイト」という車漫画に出てくる、家族や子供を捨ててチューニングに命をかけるキャラについても、めちゃくちゃ熱く語るしとにかく面白い。

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