【書評】ダメな議論


拷問読書

最近読んだ本の中では一番勉強になった。ちまたに溢れているダメな議論をたくさん提示し、そのどこがダメかをひたすら指摘する本。ただし、よい議論のお手本はない。ひたすらダメな例を挙げてそれを避けるようにすれば、自然と議論の質が上がるだろうというスタンス。

例えば、著者が指摘するダメな議論の一つに反証不可能な言説というのがあります。「ゆとり教育」とか「生きる力」とか、気持ちよく聞こえる言葉を使って自説を主張していくと、立派なことを言っているようには聞こえる。でも、「生きる力を育てる教育が必要である」とか言われても、言葉の定義がはっきりしていないため、議論にならないからっぽの言説となる。

この本を読むと、間違いなく普段読む記事やえらい人たちの主張の見方が変わります。なんでも批判的に読んだり聞いたりして、本当に言われていることが正しいのかを自分の頭で考えることが大切だとはよく言われるけれど、本書ではそうするための具体的なアプローチが分かりやすく書かれています。

とまあ、この本の書いていることはもっともなんですが、世の中にはどうしても定義づけができない、もしくはしないほうがよいようなこともあったりする。例えば、GOOGLEがアプリケーションソフトを作るときに大切にしている「それってCOOLだろうか?」っていう考え方も、きちんとCOOLとはどういうものかという定義づけがされてしまえば、突然つまらないルールになりそう。

とはいいつつも、溢れまくっている情報に対して、簡単に納得しないための考え方を学べるよい本でした。これと似ている本で、「社会調査のウソ」という本も最近読んだ。こっちは、人間がだまされやすい統計データという数字に騙されないようにする本。ダメな議論とセットで読むとよい感じ。

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