「ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか」
「任天堂 “驚き”を生む方程式」
「成功は一日で捨て去れ」(ユニクロ)
上記の三冊を最近読みました。ピクサー本は単純にピクサーファンだから。任天堂の本はたまたま安く手に入ったから。ユニクロの本は池田信夫ブログで評価されていたのがきっかけ。
結論から言うと、ピクサー>>>>>>ユニクロ>>>任天堂 の順番で面白かった。単純にピクサーファンなので多分に偏見がまじってます。本の薄さではピクサー本がダントツに薄い。でも内容は濃い。
【ピクサー本】
天才クリエイター達がいかに働きやすい職場を提供するか、どうやってヒット作をハズレなく連発していくかを解き明かす本。本の著者である社長もクリエイターであり、映画監督でもある人です。
一つは監督がとにかく好きなものを作れる環境を、これだけ大きな舞台で実現しているところ。ハリウッド映画では、「最新のCGI技術を使い、流行の環境問題をからめ、売れてる俳優を使うからそれにぴったりの脚本を書いてね」といった形で予算が出ることが今でも珍しいことではないみたいです。
さらに、一応マーケティング的にも売れやすい方法をとっているため、そこそこ制作費回収できるパターンでもあるらしい。しかし、ピクサーでは本当に面白い作品を作るため、監督が本当に作りたいもの、興味のあるものを第一優先にするとか。オモチャが夜中に動き出すと面白い、お化けの世界を想像したら楽しいなどの純粋な監督の子供時代の夢を映像化されたのがピクサーのヒット作の数々らしい。
また、アメリカによくある流動的な雇用体系ではなく、日本的な終身雇用制に近い会社形態を取っているのが一番印象に残った。トップとクリエイター達の距離をできるだけ近い職場環境、監督に言いたいことが直接いえる場を作り出す工夫をしながらも、優秀なクリエイターを家族にできるだけ長く囲っておく経営方針。もちろんお金の面もあり、一番の原動力は楽しい仕事という面がそういうことを可能にしているんだと思う。
終身雇用制を可能にしてる秘訣は深く書かれていなかったけど、単純にクリエイティブな仕事だから高給も払えるし、オモシロい仕事だからこそ離職率も低いという単純な理屈だと思う。なので、日本的大企業で同じようにやっても、こんな理想的な終身雇用制度は実現できなさそう。ひたすら一般的な業務を楽しくできる工夫を徹底的に研究するぐらいかも。
【成功は一日で捨てされ】
去年、日本で一番稼いだユニクロの社長の本。即断即決、スピード感がもっとも重要であると書いている。とにかく素早く失敗して進化を早めるという経営方針。ユニクロの農業進出、イギリスへの展開など失敗した事業もいろいろと書いてあり、経営本にありがちな成功事例ばかりではない部分は結構いい。
ちなみに、大学ではユニクロでバイトしている友達が結構いるのですが、ひたすらきついらしい。覚えることは他のバイトに比べて10倍ぐらいあり、厳しい店舗は年末もなかなか休ませてもらえなかったりと。一番負担なのが制服はユニクロの服を着るという部分。一応割り引きで買えるけど、制服を自費で購入するというこの制度は考えてみるとあくどい。さらに、この制服は毎回同じ服装ではいけないカジュアル服。こういった負の部分はもちろんこの本では書いていない。
逆に、今乗っているユニクロのマーケティング展開など、社内資料を現場で観覧できるのは楽しいとか。季節を狙ったフリースやら、新ブランドやらの展開戦略などの最新情報がオモシロいらしいです。
【任天堂本】
WiiやDSなどで復活した山内社長の事業戦略が詳しく書かれている。ゲームは生活必需品ではないため、一瞬でもユーザーに退屈感をもたれてはいけない。そういったユーザーに不便さを感じさせないノウハウが任天堂には蓄積されていて、業務リモコンとかに進出しても違いが出せるのだとか。
ファンには間違いなくおもしろい本なのだけども、どうも経営本にありがちな成功事例をならべる感が強く、個人的にはもひとつだった。
この3冊の中では、ピクサーの本だけが普通の会社本とは違いかなりオススメ。クリエイター系の会社でしかできない方針かもしれないけど、これ系の本の中では間違いなく異色。ユニクロと任天堂の本は調子のよい会社のよくある経営本といった感じ。勉強になる点はもちろんあるけど、普通の経営本でもあり。