【書評】スパークする思考


拷問読書今週のノルマ1冊目。累計40冊目。著者はボストンコンサルティンググループの日本代表を務めたこともある内田先生。僕が通っている早稲田大学でも「市場競争戦略」を研究課題にゼミをしていて、今年の秋にぜひ入りたいと思っていたので最近出版された本書を読んでみました。

この本は「いかに学んだ知識を生かすか」ということがテーマ。世の中には情報管理術のテクニック本などが溢れていますが、この本ではあえて整理せずアナログを重視したほうがよいと書かれています。

著者は東大の工学部を出ていて昔からIT系の分野にも見識が広く、学生時代からあらゆる情報活用術を試してきた結果、アナログ的な手法が最も効率が良いという結論に達したようです。

●情報は整理するな、覚えるな

「情報活用に力を入れすぎると情報に翻弄される。インプットに10の労力を使っても、アウトプットには1か2しか活かせない。その割合を何とか逆にしたいと考えた。つまり、インプットの労力は1か2で、アウトプットは10できるという情報収集、活用術だ。」

この方法は何かというと、単純な話で「問題意識」というものを持つことらしいです。さらに、思い出せない情報はたいした情報ではないと本書では言い切っています。自分にって重要な情報であれば自然と頭の中のどこかに引っかかり、何かの拍子にまたよみがえってくると。

何かのきっかに頭の中に入れた情報を熟成させ、自分なりのデータベースから思考をスパークさせて新しいアイデアを生ませる。この非常に単純な仕組みを意識することの必要性が本書の肝となる主題です。

手段と目的が逆転してしまう現象は世の中のあらゆる場面で起こっていることだとは思うのですが、それに対する有効な処方箋にもなる話でした。

これは、日露戦争で活躍した日本海軍における名参謀、秋山真之の読書法と似ている部分があるなと思いました。この人はひたすら海軍作戦に関する本を乱読し、印象に残った部分は自然と記憶しておくからほとんどの本は捨ててしまうらしい。たまに強烈に印象に残った部分はメモを取るがそれもよく紛失するとか。

●情報を熟成するために

本書で紹介されている方法は、「人に話してアイデアを育てる」、「書きながら考える」、「実践できるものなら試す」などです。とにかく実行が簡単で単純な方法を意識して行うことが書かれています。要は頭の中にいれた情報を熟成させてひらめきを得る、これができればなんでもよいということなんだと思いました。

●本を読み終わった後にすること

最近本を読み終えた後に個人的に実践していることが、「読み終えた後に印象に残ったことはなんだろうか」と頭の中だけで考えることです。読み返した後に特に思い返すことがなかった本はそれほどよくなかったんだなと考えています。

この本のいいところは、情報を暗記しようとがんばらない姿勢というかいい意味でのいい加減さを推奨しているところ。それよりも、どれだけ問題意識・興味を持って日々の生活を送るか、あらゆる場面で得た情報をどうやって活かすかを考えることに重点を置くという部分。

ちなみに、本書を読んで感じたことは「重要な要点は自然と覚える」、「得た情報を熟成させることを意識する」など。

●それならば、要点だけを読めばよいのか?

本を読んでいて本当に重要な部分は数行だけだとよく言われます。確かにそのとおりで、他の箇所はその数行を説明する事例だったり、考え方だったりします。ただ、自分としてはいわゆる「まとめ」だけを読んでも要点を理解することは難しいと最近思うわけです。

もちろん、今まで似たような本を多数読んでいてだいたい言おうとしていることが分かってしまうというような時は別なんですが。

例えば、最近読んだ「ゴール」というビジネス書の制約理論はもっとコンパクトにまとめてくれている解説HPなどがあります。でも、それだけ読んでも馬鹿なのであまり記憶に残りませんでした。その後、ストーリー仕立てになっていて幾分くどい感じのある「ゴール」を読み終えた後は、少なくとも理論への理解が深まりました。

これは、細かい補足説明やストーリーなども読みうちに重要な部分への理解が熟成させられていくのではないかと思うわけです。

そういう意味で、似たようなテーマの本をあえて数冊読むことの大切さとも本質的には同じだなーと思いました。