【書評】囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲームの理論


拷問読書経済学の教科書などで出てくる「ゲーム理論」がどういうものかよく分かる本。

この理論を考え、世界で最も賢い人間と言われたファン・ノイマンについても結構なページが割かれている。いろいろなジレンマにおける話が出てきて、内容もなかなか難しい。

しかし、人間社会におけるジレンマを扱うというテーマそのものが面白いので最初の導入部分からワクワクします。本書の主題でもある「囚人のジレンマ」はぱっと聞いてわかりにくいので「裏切りゲーム」とかのほうがよいような気もする。詳しくはウィキペディアで。

お互いに協調したほうが両者にとっては最大の利益が得られるのに、裏切られる可能性を捨てきれず結局は協調できないというジレンマは社会のあちこちで存在している。(核のジレンマなど)このジレンマに陥った時に合理的な解決方法はあるのか?最もよい戦略は何か?という理論がゲーム理論。

結論からいうと、このジレンマは解決不能であるらしい。さらに、人間は必ずしも合理的に行動しないので予測もできない。面白いのは、囚人のジレンマを何回もしなければならない状態に陥った時、実験によって出た最もよい戦略は協調戦略だった。結局、実社会では裏切った事を回りに記憶されると、将来の自分の行動にとって不利になるからなのがその理由。

自然界の動物もお互いに協力しあう戦略をとる例が多いと書かれている。ゲーム理論を突き止めて出された戦略を、自然界の動物たちが無意識にとっているというのがとても面白い。合理的だったことが環境の変化によって非合理になったり、何も考えずに行動していることが実は合理的だったりする例が世界にはたくさんあるんだろうと思う。

本書を読み進めていくと、結局「ゲーム理論」は合理的でない人間にとって意味のない理論じゃないのか?とか、そもそも使えない理論に何の意味があるんだろう?とかどうしても考えてしまう。

そんなモヤモヤを吹っ飛ばしてくれる、本書の最後に書かれている文章がこれ。

囚人のジレンマに対する唯一の満足いく解決策は、囚人のジレンマを避けることだ。これこそ、我々が、法律や倫理、その他協調を促すあらゆる社会体制と共に、今までに試みてきたことである。

裏切ったものが得をするため、協調できないジレンマに陥った状態が囚人のジレンマ。それを阻止するために宗教が生まれて、協調を社会のシステムとして促すために法律ができたのか!となぜか感動してしまう最後の閉めでした。