【書評】資本主義崩壊の首謀者たち


拷問読書今週3冊目。累計115冊目。世界同時不況を引き起こしたのは、アメリカの金融エリートたちだ。そいつらをひたすら叩くぞ!といった内容の本 です。叩かれる人達は、元FRB議長のグリーン・スパンを筆頭に、アメリカ金融業界の重鎮たちの面々。これだけ聞くとよくある本みたいに聞こえるが、この 本は叩きに対する掘り下げが細かく、叩く対象の数が多い多い。

例えば、リーマンブラザーズ創業一家の家系図を使って腐敗の系統を説明したり、シティグループと政府の財政顧問達のつながりを指摘したり、ロスチャイルドファミリーと現在の政府高官たちの系統を説明したりと。

オバマに対しては、地域に根ざした地道な活動を続けてきた正義の弁護士であり、政治家だと評価している。でも、新しいオバマ政権の金融担当に任命された面々が過去にやってきたことはね。。。みたいな形で叩きが再開。普通、ある程度はその人達がやってきた功績も少しは紹介するのですが、この本に関しては、そういった生ぬるいことは一切なし。徹底的にウォール街の金融エリートをメッタメッタに叩きます。

こいつらが世界の金融業界を牛耳る大犯罪者たちだ!といわんばかりに、(というか、そう言っている)ユダヤ人系列の大物たちの系列一覧まで作る徹底っぷり。 なんか、ここまで一方的だと逆に、サブプライムも最初は貧しい人達が家を持てる制度だと評価されていたんですよね、と金融エリートたちをちょっと擁護してしまいそうになります。

著者はアメリカ金融界の本を多数出しているので、この分野は相当詳しいのだとは思う。スケールのでかい金融業界の闇に対しての知識もつく。しかし、本書を読んでもっとも勉強になったのは、よかった部分を少しもあげないで、ひたすら批判すると説得力が少し下がるなあということ。メリットとデメリットの両面を話さないセールスマンが信用しづらいのと同じ理屈ですな。

その点、「なぜ世界は不況に陥ったのか」は、失敗は必ず繰り替えされるから、その後どうやって被害を最小化できるかという仕組み作りが大切というスタンスだった。後付けで金融政策を叩くといった方針ではなかった感じです。

でも、この国際的な金融腐敗の実態は本当だろうし、金融会社のトップ達が政府の中枢に入りこみまくりのアメリカの構造はびっくりします。日本で証券会社の幹部達が財務省長官に上り詰めるとかまず聞かない。

ちなみに、本書で絶賛されている、アメリカの漫画家による政治の風刺画の紹介と解説はかなり面白い。筆者いわく、アメリカの風刺漫画家の知的レベルは高すぎる!とのことです。