【書評】それがぼくには楽しかったから


拷問読書今週1冊目。累計107冊目。無料OSであるLinuxを作ったリーナス・トーバルズの本。おもしろいので一気に読めた。LinuxはいまやWindowsに次ぐシェアを誇り、世界中の人々が日々改良をされる無料OS。億万長者になったビルゲイツとは対照的に、Linuxを作った人物はオープンソースというLinuxの性質上、大金持ちにはなっていない。

作者はただ楽しいからOSを作ったのであり、世界中の人々からフィードバックをもらいたかったからオープンソースにした。この本を読んでいると、お金よりも楽しさ、自由を重要と考える作者の考え方がよくわかる。

ちなみに、パソコンの専門知識が出てくる部分は50ページほどで、その他は専門知識がなくても読み進められる。ネット上の著作権侵害が問題になる昨今、オープンソースと知的財産権の考え方に触れられる本です。

■アップルのジョブスが引き抜きに

最高の人材を追い求めるジョブスさん。お金持ちではないものの、Linuxを作った人物として世界中のオタクにとってのヒーローになったリーナスさん。この二人が引き合うのは必然だったのかもしれません。

しかし、ペプシ社長のスカリーを独特の魅力で引き入れたジョブスも、考え方がまったく違うリーナスを説き伏せることは無理だったよう。

「ぼくたちは、根本的に、ものの見方が違っていた。ジョブスはジョブスなのだ。まったく新聞が書いているとおりの人物だった。彼にとって関心があるのは、自分の目標だけ。わけてもマーケティングのことなのだ。ぼくにとって関心があるのは技術面であって、彼の目標や話にはあまり興味がない。」

なんか、ジョブスはデスクトップ市場を支配したいならアップルと手をくもうぜ!と言ったらしい。しかし、リーナスはそんなの関心ありませんとなったみたいです。

まあ、マーケティングには興味がなくて、技術ばっかり興味がある人もアップルにはたくさんいると思う。普通の技術者なら、ジョブスに「世界を変えたくないか?お前の最高の技術をもっとも発揮できるのはアップルだけだゼ!」とでも言われればかなり魅力的だとは思うのですが、リーナスにはオープンソースコミュニティーという、自分の才能を十分発揮する場がすでにあったのが大きかったんじゃないかと。

■なぜ世界中のプログラマが無料で協力するのか

やっぱり、それは楽しいからなのですな。リーナス自身がLinuxを作ったのも楽しいからだったし。

「多少なりとも生存が保障された社会では、お金は最大の原動力にはならない。人は情熱に駆り立てられたとき、最高の仕事をするものだ。楽しんでいる時も同じだ。~中略~オープンソースモデルは人々に情熱的な生活を送るチャンスを与える。楽しむチャンスも。」

ちなみに、リーナスさんは寝るのが大好き。いっぱい寝てこそ、起きている時に精一杯頭を働かせられるのだとか。