【書評】超ヤバイ経済学 superfreakonomics


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ヤバイ経済学の続編を洋書で読んでみた。訳書はまだ出てないので邦題を勝手に予想。(邦題が出たので、もっとヤバイ経済学から修正)

この本は、奇才の経済学者が身近な事柄を経済学的な視点から研究していく内容。
前作も最高に面白かったけど、今作のほうが面白い。アメリカのアマゾンの評価では「前作ほどのインパクトがない」とかいう評価もあるけれど、奴らはまったくもってわかっておりません。

音楽アルバムでも、たいていデビュー作が一番よいということはあるけれど、この本に限っては続編でもパワーが落ちてない。単純に「人間はインセンティブで動く」という同じテーマを扱っているので、始めて読んだ時ほどの感動が薄れてしまっているだけじゃないかと。そうに違いない。今作も間違いなく面白い。

前作の「ヤバイ経済学」では、「相撲で八百長はあるか?」とか「米国のある州における犯罪率低下は中絶合法化が一番効果的だった」とか、面白い内容を数字を使って解き明かしていく内容でした。著者たちはどうせ売れないだろうと思って書いたら、予想外に全世界で馬鹿売れしてびっくりしたとか。この本の影響でやたらとインセンティブを発言の中で連発しちゃった恥ずかしい過去を持つ人も、僕以外にいるはずです。

今作でも章ごとに読んでて面白いトピックを扱っている。中でも面白かった部分を絞ると以下の3つになります。

1 女が男に比べて平均賃金が低くなる本当の理由
2 温暖化を地球工学で効果的に、安く解決する方法
3 飲酒運転と飲酒して歩いて帰るのは後者のほうが死亡率が高い

1では、現代において男女差別よりも、女性にとって子供が重要だという部分のほうが大きく影響しているという話を数字を使って分析していく。

2では、地球温暖化のために重要だと思われている数々の事柄の誤解。そもそも地球の気温変化に人類の影響はあるのかなどから始まる。ここらへんは珍しい言説ではないかも。面白いのが人工的に大気中にスモッグみたいなものを発生させて、若干の大気汚染と引き替えに一気に地球を冷やす方法など。

3では、飲酒した後に車を運転した場合と歩いて帰った場合、後者のほうが死亡の危険性が高いという驚きの数字を出してくる。チャイルドシートが逆に死亡率を高めるリスクなど、常識をぐらぐらと揺さぶってくる部分。個人的に一番面白かった。

前作でも今作でも、経済学という一見とっつきにくい学問を「わかりやすく」「面白く」「深く」という視点で紹介していく著者たちの姿勢は最高です。学者だったらもう少し遠慮するんだろうけど、とにかくセンセーショナルな書き方をしようという姿勢がいい。あまりやり過ぎると売るためのポーズに見えるかもしれないけど、経済学なんて元々一般ウケしない分野だからこれぐらいやったらちょうどいいと思います。

科学、数学、経済学、哲学とか、なかなかおもしろさを伝えにくい分野でこういう本がどんどん出てくると学校の先生は楽なんじゃないかと。