文系には理系の良さを、理系には文系の良さを教え、バランスの取れた思考はいいですよという指南書。特に、理系的思考の長所を上手く表現しているので、自分みたいな文系人間にとってはおもしろい。内容はゆるい。
序盤では、文系バカや理系バカのパターンを紹介している。正直、ここの内容はたいしたことないので読み飛ばしてもよし。おもしろくなってくるのは中盤から。理系的な視点はどう役に立つのか。文系的な視点はなぜ必要なのかを語るところ。
特に立ち読みしてでも読む価値あるのが、終盤の「なぜ微分積分が必要か」の部分。ここは別に微分積分の重要性を書いているわけではなく、いかにそれぞれの学問が有機的に繋がっているかを熱く語っています。
物理の土台には数学がある。細々とした事象をすっ飛ばして、一気に人間や経済の動きを学問にしたのが経済学。さらに、昨今の経済学では、人間の不合理な心理も取り入れた行動経済学もある。これは心理学がかかわってくる。この有機的な繋がりを説明する部分が本書のハイライトだと思います。
さて、文系と理系とこの本では区切っているけれど、まったく数学ができない人も論理的に考えることはできるわけです。例えば、論述文の構成、「なぜなら」の説明なども論理的思考を使っている。
直感的な思考の裏には、実は綿密な論理的思考が隠されていたりもする。スーパーで晩ご飯の材料を選んでいる主婦は、冷蔵庫の残り、商品の価格、食べる人数などを瞬時に計算して商品の選択をしたりするわけで、これは高度なプログラミングみたいなもんです。
結局、完全な文系人間や理系人間というものは存在しない。ただ、新しい視点、それぞれの有機的な繋がりを見るには別ジャンルの視点を訓練する必要があるんだなという気にさせられる本です。