[書評】フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略


拷問読書

最近読んだビジネス本ではダントツに面白かった。ロングテールもかなりよかったし、クリス・アンダーソンの本はいい!ビジネス書にありがちな退屈感が一切ない。経済学とネット文化という自分好みの領域を満たしてくれるのも大きい。

本の内容は、インターネットの普及によって大きく発展した無料ビジネスモデルの徹底的な研究内容。無料の景品から購買行動を誘導する昔ながらの無料を使ったビジネスモデルも詳しく紐解き、ネットの登場によって従来の無料ビジネスモデルが劇的に変換されたことを書いています。

「フリーランチはない!」というのが経済学の常識だったわけですが、ネットの登場によってこの認識は大きく変わる必要があるそうです。現在のネット上における無料ビジネスモデルでは、「完全なフリーランチはもちろんないが、その限界費用は気にならないほど安い!」とのこと。

つまり、今まで無料の製品は有料製品に比べて質が落ちたり、アフターサービスが悪かったり、めんどくさい広告やアンケートなどが付いてきた。しかし、グーグルのGMAILなどに代表される無料ネットサービスは質がいい。むしろ、有料メールサービスより遙かによい。これは、ネットという限界費用を極限まで低くした状態で大量のユーザーにサービスを提供できる状況だからこそできるビジネスモデルとなるらしい。

経済学の観点からすると、サービスの限界費用はいずれ下がっていき、0に近づいていくらしいけど、無料ビジネスモデルは最初からサービス価格が無料となる。こう考えると、経済学の理論も時代や状況の変化によってどんどん変化しないといけないのがよくわかってくる。

ちなみに、経済学の主流派は時代によってどんどん変わっていき、いったいどの理論が正しいのか誰にも分からない。大学の経済史の先生も、「昔はマルクス主義が当たり前だった。教授たちもおおっぴらに間違いを認めないけど、こっそり主張を変えるんだよー」と言ってた。

今の主流派もそのうち否定されるのだったらむなしくなるわ!と思ったりもしたけれど、ネットの登場だったり投資銀行のエージェンシー問題みたいに、未来の状況はどんどん変わるからそれに応じて理論も変化するのは当然なのだなと納得。

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