【書評】コモンズ


拷問読書

とりあえず今年読んだ中でダントツによかった。本書はインターネット上での著作権のあり方について、サイバー法の第一人者である法律家が書いた本。人を殴れるぐらい分厚いので躊躇してしまうけど、著作権に興味があれば絶対おもしろい。

【本の概要】

著作権というものがなければ、誰もが簡単に盗作しほうだいになる。そうなると、人々が新しいものを作る動機がなくなってしまう。音楽家は新しい曲を作るインセンティブを失うし、企業はモノを生産してもお金を稼げない。だから、著作権は大事。

と、こう考えるのは簡単なのですが、あまりにも著作権を保護しすぎると新しいイノベーションが起こらなくなる。例えば、Jazzは元々いろいろな曲のフレーズを即興で組み合わせて発展したものだし、ウォークマンのダビングが違法とされると今日のipodも生まれなかったかもしれない。

行き過ぎた著作権保護はその産業の発展を阻害する。そもそも完全にオリジナルなアイデアなど存在しない。新しいアイデアは既存のアイデアを参考にして発展させたものばかり。では、どこまでが合法でどこまでが違法にすればよいのかっていう永遠のジレンマがあります。

このへんは、市場原理に任せる部分と、政府が介入する部分の線引きをどうするかで専門家の意見が分かれる経済学に近いところがある。この本の著者は、インターネットの世界において、産業の発展を著しく阻害するほどの行き過ぎた所有権保護が行われていると指摘しています。

【思ったこと】

リバタニアンよりの考えを持つ自分としては、とにかく著作権をしばる規制を政府が段階的にゆるめてみて、どういった収益方法が生み出されていくかをどんどん実験するべきじゃないかと思うわけです。

と思ったけど、その前に、過剰な著作権保護がイノベーションを阻害して、結果的にその産業そのものを衰退させてしまう要因となってしまうという考えがもっと広まらないといけない。この考えを理解しつつ、バランスを取りながら維持される著作権なら価値がありそう。というわけで、義務教育では著作権とイノベーションの関係について分かりやすく教えるといいかもしれない!

音楽業界もCDの売上げがガタ落ちになってるけど、itunesの売上げは伸びている。違法ダウンロードで手に入る音楽だとしても、お金があって時間に余裕がない人は手軽なitunesでポチッと音楽を購入しちゃう。

「価値があるものなら人間はお金を出すんだよ!」っていう人もいるかもしれないけど、ここでお金を出す動機になってるのは間違いなく利便性だと思うわけです。もし、ウイルスの危険もなく、すぐにタダでipodに入れる方法があればそっちを選ぶ人が多いのは間違いない。単純に、手軽に、素早く、安心の質が手に入るのでitunesでポチッとする。

こうなると思ったのが、利便性と時間に対しての価値がどんどん高まりそうってことです。とにかく、いくら便利になっても一日に24時間しかないのは変えようがない。そうなると、いかに素早く、簡単に商品が購入できるかとか、情報を手に入れられるが重要になってきます。それと同時に、複製できないモノにも価値が高まる。アーティストのLIVEとか、学者の講演会とか。

この前読んだ「フリー」という本は、ネットで本の内容が全部無料で読むことができる。時間が無い人のための要約版は有料。このへんは要約版もデジタル形式なので、最終的には無料に近づいてしまう複製可能なモノだけど。

【講義ノートの著作権】

こういうことを考えていると、大学の授業のノートの貸し借りにも考えが及んでいきます。

授業に頑張って出てノートを取り、それを友達に貸すと、貸した人の評判は高まりますが、平均点は高まり、相対評価の場合は損をすると貸した人は考える。これはイカンと思うわけです。もっと、生徒同士が助け合うことが全員のメリットになるようなシステムにならないと。

こうなると、自分が教授なら、できるだけ生徒同士で助け合うことが生徒にとってのメリットになるようなシステムを考えたくなる。理想としては、講義に出なくてもよいし、ノートや教科書で理解できるのならそれで問題ない。最後のテストで不正無くよい点数が取れればその生徒にとって一番よいのだから、ノートを貸し借りして多くの生徒が内容を理解できたらそれはそれでOKなわけです。

話が長くなり、脱線しまくりなため、このへんで終了。この話は別のところに書いてみようかと思いまする。