【書評】30歳からの成長戦略


拷問読書

今週2冊目。累計93冊目。タイトルが自己啓発っぽく安易で損をしている。内容はすごくいい。

論理を極めても説得できず悩み、感情と論理を融合させても心を中を見透かされる。無欲に挑戦しても自分を動かすエネルギーが足りない。最終的には相手を幸せにしようという欲を持ち、自分を捨てることにいきついたという悩みの過程がおもしろい。

著者は外資系の有名コンサルタント会社ATカーニーの元太平洋地区代表。この本は欲張っていると説明書きにも書いてあるとおり、ビジネスの基礎知識から精神的な考え方、人脈、休息の取り方まで本当に欲張っている。

いかに実力派天の邪鬼になって他人と差別化する必要があるか、ビジネスの基礎知識を凝縮して説明しているところも分かりやすい。けれども、この本で特におもしろいのは経営コンサルタントとしての著者の悩みの経験談と休息の重要性の項目。

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。 」という夏目漱石の有名な一文があります。経営コンサルに限らず、世の中はこの矛盾でいっぱいですが、その状況に対するひとつの示唆が分かります。

著者は最初ひたすら論理思考能力を学んだ。でも、論理だけでは相手は説得できない。相手の話を聞いたり、意見を尊重する感情からの訴えかけが必要となる。そこで、論理と感情を合わせもつ方法を次に覚える。

しかし、「あの人は優しいけど本当は自分のことしか考えてない。」という意見を耳にし、心の中が見透かされていることに気づく。そんな時に仏教の無欲の境地になる本などを読み、自分の欲を捨てることを学ぶ。そうして欲を相手のために使うことにして、周りの幸せを意識して初めて上手くいったらしい。

この悩みの過程が本書で一番おもしろいところ。後半になってどんどん吸い込まれていくのは、経営コンサルの悩みや葛藤を正直にさらけ出しているところだと思う。

他にも、人脈は追いかけても作れないから自分の魅力を上げることが重要。休息をしっかりとってこそ初めて仕事の意欲がわき本当によい仕事ができる。といった内容が書いている部分もいい。

論理思考と感情思考の矛盾を解決するため、あらゆるジャンルのイメージを蓄積して落としどころの切り口を探す考え方もおもしろい。論理と感情の矛盾を解決するため、著者は人文科学、歴史、宗教などあらゆるジャンルの本からイメージを作ったそうな。