【書評】世界はなぜ不況に陥ったか


拷問読書

今週1冊目。累計92冊目。普段読んでいる「池田伸夫ブログ」に紹介されていたので読んでみた。考え方はブログと似た系統だけど、基礎的な知識から詳しく金融危機のことを説明していておもしろい。

自分は経済や金融の知識はあまりないのですが、そんな人でも分かるように書かれているので読みにくい本ではないと思う。日本でいまだに通説とされているような、「公共事業を行えば、雇用を創出できる」といった言説など、ケインズ経済学に対する反対論なども詳しく書かれている。

この本で特におもしろいのが、今までの経済学者の主張と現代の状況のギャップを書いているところ。ケインズ理論に対する反論はもちろんなのですが、フリードマンの理論も一部現実にそぐわない状況もいくつか出てきたことを指摘しています。

サブプライムローン問題の始まりから、なぜ不況にまで陥ったのかはこの本でだいたいよく分かる。この本のよいところは、結果論でサブプライムローンの問題点を指摘してばかりはしてないところ。

もともとサブプライムローンは貧乏な人も家が買えるようにする仕組み。評価されていた制度だったという当時の状況を説明し、それがなぜ破綻していったかを順を追っている。

他にも、エージェンシー問題を解説した項目がおもしろい。ウォール街のランダム・ウォークにあるような、市場は合理的に動くという問題が現代ではなかなか通用しなくなってきたらしい。この本自体もバージョンが上がるごとに、最近では合理的に動かない部分がいくつかあることので修正に修正を重ねているらしい。

それはなぜかというと機関投資家のエージェンシー問題。個人投資家が投資するには、自らの投資額のリスクを自分で負うからリスクとリターンはイコールになる。でも、機関投資家は大損をしても全額を自分で賠償する責任はない。結局は会社に投資した個人投資家が損をこうむるわけで、機関投資家はリスクをどんどんとったほうが合理的になる。

このエージェンシー問題が市場が合理的に動かない原因にもなるし、今回のサブプライムの原因にもなっているようです。

ウォール街のランダム・ウォークを読んで、ドルコスト平均法で積み立てしている自分からすると結構悩まされる問題ですなあ。でもランダムウォークは株式投資するなら絶対にまず読むべき本なのは間違いないです。まず最初に読んで、それでも市場に勝つんだ!という気概があれば次のステップに進めばよいかと。