iOSアプリ作ってる人間が「沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか」を読んだ


沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか

もうアップル関連の本は読みすぎてしまったので、もういいかなと思ってたんだけど、テククランチで薦められてたので気になってた本。

どうしようかなあと思ったけど、iOSアプリを毎日作っている自分として一応は読んでおくか、なにか新しい発見があるかもしれんと思い読んでみた。

この本に期待していたのは、ジョブズ以後でアップルの社内でイノベーションが起きなくなっているという主旨の裏付けとなる社内情報だったり、ネットで読んだ事がないゴタゴタです。

どこかで読んだ事がない情報というところがポイント。

個人的にはまだまだAndroidよりiOSのほうが開発の手間に比べて費用対効果が高いのでiOSオンリーだけど、この本を読んだ後だと、この前少しやり始めたAndroidのやる気がもっと出てくるかも。

前半はジョブスが死去するまでの話

前半はジョブズがどんどん弱っていくところで、アップル社内がどういう様子だったかの話。

このへんはジョブズの伝記にも書かれている部分が多く、そこまで目新しい事はない。でも、筆者はジョブズ伝記の作者に本に書かれてなかった部分とかも聞いたらしく、ちょっとだけ知らない話も出てくる。

クックがCEO代理になって上手くやっているところをジョブズが気に入らなくて、「俺がCEOだぞ」と会議で切れてクックをひたすら批判してもクックはいつも通り冷静だったとか。

ここらへんはそこまで目新しいところないので詳しい人は飛ばしてもよし。

サムソンとの訴訟問題

この本で一番面白かったところが、サムソンとの訴訟問題のところ。この本で唯一面白い部分。

ソフトウェアの特許って結構デリケートな部分があって、最近はシリコンバレーの大企業にとって特許を取らないと訴訟されて金せびられるという自体が大問題になってる。

なので、大企業は特許を主張するというより、訴えられないように防御的な意味で取ってる。

「こんな馬鹿げたUIの些細な部分に特許を取るなんて!」とGoogleやらもよく批判されたりもするけど、これは防御のためであって個人開発者に特許侵害で訴えることはないですとか言ってたり。

で、この訴訟問題の部分は、サムソンが作ったギャラクシーがiPhoneをパクってるパクってないの法廷騒動の話で、法廷での出来事がなかなか詳しく書かれてる。

アップルのデザイン部門の偉い奴が法廷の出てきた時は、そいつがあまりにもカッコ良く決まっていて法廷全体が飲まれてしまったとか(笑)。

アップルってデザイン部門の人達がカースト制度の一番上で、お金面でも休暇面でも待遇がよいらしい。その点、サプライ部門の人達は馬車馬のように働いていて、待遇も悪いとか。

確かにクリエイティブ部門って働きすぎてもいいアイデアが出ないとかそういう理屈があるからいいな。働きすぎたくない人や、ワガママを通したい人は芸術家とかクリエイターのふりをするのが住みにくい世の中での処世術かもしれません。

アップルが落ち目である裏付けの部分

さて、この本の主旨である、アップルが落ち目だよって部分の裏付けが本の後半になって怒濤のように湧き出てくる。

メインはSiriや地図アプリの失敗。クックは表計算ソフト人間だからイノベーションは起こせないっていうよく言われている主張。

Siriと地図アプリは失敗だったのは間違いないと思うので、ここはそうかなと思うけど、逆に言えば特に新しい話でもないので読み進めて行く。

ちょっとこのへんから、本の主旨に合わせようとひたすらアップルが凋落していく前兆だといろんな話を強引に結びつけていく感じが凄くした。

そもそもこの本の主旨は”沈みゆく帝国”なので、帝国が沈んでいく話を書かないといけないのは重々承知しているのです。

ただ、比較的客観的な中盤までの話に比べて、後半は突然強引になんでもかんでも「これは没落している!」と結びつけまくってて、突然トーンが変わり始めてしまったなと思ってしまう。なんでだ。

例えば、WWDCが盛り上がらなかったとか、ジョブズのような素晴らしいプレゼンターがいなくなったとか。

僕は見ている限りでは、確かにiPadのような大きな変化はないけど、iOS7というジョブズ後の最大の変化は移行率という面でも、デザイン面の改革でも成功だったと思うんですよね。

個人的にiOS7は凄い開発しやすいし(笑)。

あと、ジョブズ後に出てきたグレイグ・フェデリンギさんのWWDCのプレゼンなんてどれも活気と情熱に溢れていて素晴らしく、ジョブズより上手いんじゃないかっていうコメントもちらほら見たし。クックさんも二年目はかなりよくなってた。

もうちょい、社内での雰囲気がどう変わったの詳しい話とか、アップルから他の企業へ移った人数の詳細なデータとか、ああ、確かにこれはヤバいかもっていう新たな知見が欲しかったんだけど、このへんは期待はずれであった。

クックについて詳しい

この本、アップル関連の情報をネットで追ってたり、スティーブジョブズの伝記とか読んでる人は期待ほど新しい話ないけど、新しいCEOティムクックについては結構詳しく書かれてるので、クックさんに興味ある人はオススメ。

それ以外はそこまで必見ってわけでもない。僕はiOS開発してるのもあり、アップルの文化に興味あるのもありなんだかんだいって面白かったけど。

いや、でもアップル関連の本や情報がすでにありすぎるのがよくないのかもしれません。そもそものスクープは著者が本が出る前にネットで書いたわけだし。

アップルが思ったより今後粘るのか、急落するのかは神のみぞしるですが、開発しやすくてビジネスしやすいプラットフォームが栄えてくれるのが一番ですね。

関係ないけど、取引手数料が大幅に下がる可能性のあるビットコインに期待。

沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか