【書評】ザ・ゴール(上・下)


拷問読書今週のノルマ2、3冊目。累計35,36冊目。本書は80年代に発売された本ながら、未だに読まれ続けているという有名な本。工場の業務改善が物語形式になっていて制約理論の知識を小説として勉強できる本です。

●小説形式になっていて読みやすい

一般に小難しい手法を解説するビジネス書は読みにくいものが多いです。その難しい内容をいかに読みやすくするかを考え、本書は小説形式にしたようです。さらに、業務改善のステップごとにすぐに答えが出ず工場長と従業員が一緒に改善策を考える仕組みになっています。

そのため、読者も一緒にどうすれば工場の問題を解決できるか考えるという、ある種の謎解きの要素もあってよくできています。このすぐに答えが出ないっていう仕組みがよく出来ていて、読みながら読者にも考えさせるようにできています。

ただ、「小説としても面白い!」という意見には賛成できない(笑)ビジネス書にまったく興味のない人が本書を読んでも、「なんか小難しくてつまらない」となり、途中で読むのを止めるパターンが大多数な気がします。現にブックオフでこの本を購入した僕の友達がそうでした。

そういう意味で、自己啓発書のイヤラシサがなく、笑いを組み入れた「夢をかなえるゾウ」は偉大だったんだなと再確認。

●その作業は目標を達成するためのものであるか

本書の序盤に企業の目標、つまりゴールとは何かを考えるという主題が出てきます。コストカット、売り上げ目標、生産目標などすべての要素は利益を上げるという目標につながっていなければならないというもの。

小説の中の経理担当も「評価のための評価をしていた」と言って、従来のやり方を根本的に変更する必要性を語る場面がありました。

つまり、目的を達成するための手段が目的化してしまってはいけないというものです。これはいつの時代にも永遠の課題なんだなと読みながら思いました。官僚制度や、公務員制度でも仕事のための仕事になってしまうという問題点がよく指摘されたりします。

この問題は普段生活していく中で、あらゆる場面で出てくる普遍的な問題でもあったりします。例えば、知識をつけて将来自分の役に立つために勉強するのであり、その過程でテストという定期的な評価手段があったりするのですが、テストのための勉強になったりとか。

まあ、受験勉強とか大学の興味ない必修科目とかある意味避けて通れないものもあるので割り切りは必要なんですが。

“手段が目的かしていないか、今している事は何のためにしているかということを定期的に見直すシステムを作るのが重要だなと感じました。”自分は大丈夫だと思っていても、知らず知らずのうちに手段が目的化しがちなものだと思うので。

●制約理論とは?

この本のテーマは制約理論という業務改善理論です。これは、業務プロセスにおいてボトルネック(足手まといの部分)を見つけ、そのパートを徹底的に改善することが全体の効率を上げることにつながるというものです。

たくさんの分業で成り立っている生産工程において、一箇所でも遅い部分があると常にそこで生産が詰まってしまう。そのため、他の部分がどれだけ速くてもその一箇所が全体のスピードを決定してしまうといった考え方です。

これは、鎖で一部分でも弱い部分があれば、その弱い部分が鎖全体の強度を決定してしまうという例え話でも説明されていました。

これだけ聞くと簡単に聞こえますが実際はそこまで単純ではなく、全体最適化に到達するまでの複雑なプロセスが本書では解説されています。例えば、ボトルネックを改善する過程で新たなボトルネックが出てきてしまったり、そもそもボトルネックを見つけるにはどういう評価基準を用いて判断すればいいかなどです。



●部分最適化も全体最適化に繋がらなければ逆効果となりうる

この本で面白かったのがこの箇所です。ボトルネックとなっている部分以外の部門を常に働かせることによって新たな在庫が生まれ、全体にとってマイナスになってしまっては意味がないという考え方。

つまり、そもそも「足手まとい」となっている部門のスピードを速めないと全体のスピードが速くならないのに、他の部分がドンドン先に進んでしまってはいけないといった考えです。

この小説の主人公が工場長を勤める工場では従業員を休ませるのはいけないということで、非ボトルネックを担当する人員を常に動かしていたため上記のような問題が起こっていました。

この、リソースの最大活用が全体最適化とは限らないという考えは一番面白かったです。

ちなみに、本を読んだ後に理論の理解を深めるのに最適だったのがこのHPです。

http://www.pcatwork.com/30Biz/71392/ (pcatwork)