【書評】定量分析


拷問読書

今週3冊目。累計70冊目。僕は文系で数学が大の苦手であります。受験は私大で数学なし。高校も数学の成績はいっつもビリ。ただ、最近になって統計学に興味を持ったり数学者の伝記を読んだりして数学への興味が出てきた。いまさら理系に進めばよかったなあと後悔しています。

自分の興味のある経営の分野で使う数学となると、最近流行りのデータマイニングや回帰分析、限界利益、機会費用などの項目。このへんの知識を、文系の人にも分かりやすく説明しているありがたい本が本書。難しい数式はなく文字が多いので文系にも優しい。実際のところ、数学ではなく算数が分かれば理解できるかもしれない。教科書的な本なので読むのにはそこそこ時間がかかりましたが、コンビニ店経営の事例を使っていて分かりやすく、内容が面白い。

●合理的意志決定

この本のテーマはいかに合理的意志決定をするか。そのための様々な方法を紹介するというもの。例えば、なんとなく分かっていた気がしていた機会費用。機会費用といえば、何かをする費用ではなく、何かを出来なかった費用のことです。この機会費用の説明で社員研修の例を用いています。

「企業が社員研修を行う時、休日手当を払ってでもなぜ休日に行うことが多いのか?」

休日に社員を出勤させるための休日手当、交通費などの費用。平日に社員を研修させた場合、社員が生み出していた利益ロス。この2つを比べると、後者のほうが前者より高くつくことが多い。こういった事柄を、問題形式や図表を使って説明されています。

機会費用のことはある程度知っていても、企業の研修費用といった新しい例題で読むと理解が深まった気がします。機会費用は普段の生活でも当てはまる部分はたくさんあると思うのですが、その中でもよくあるのが「時間を買う」という考え方だと思う。

例えば、社長さんは時間が重要なので長距離バスより新幹線。学生はお金がないので新幹線より長距離バス。前者は時間を買っていて、後者は時間を売っている。自分は貧乏なので、なかなか時間をお金で買う選択肢がないのが悲しいところです。。貧乏でも借金して将来のために時間を買え!という考えは持っているのですが。

●確実性のもとでの意志決定

合理的意志決定方法の考え方の後は、ほぼ確実に予想できる数字にもとづいた時の判断方法が書かれています。ここまでは、どの手順を選んだらどの結果が出るかがはっきりしているので分かりやすい。

例えば、祭りの時に出店を出すことになり、店員数を選ぶ問題があります。

1人定員を雇うのに250の費用がかかる。

定員数1人→人件費前利益700→生産性700→人件費後利益450→限界生産性700

定員数2人→人件費前利益1,100→生産性550→人件費後利益600→限界生産性400

定員数3人→人件費前利益1,300→生産性433→人件費後利益550→限界生産性200

この例でとると、生産性が一番高いのは定員1人の時。アルバイトにとっては大変だけど、1人だったらこき使えるといった感じ。定員2人になるとアルバイトの負担は少なくなって、1人あたりの生産性は下がるけどトータルの利益は増える。

この時に重要なのはアルバイト1人当たりの生産性ではなく、人権費後の利益が最大になる方法を選ぶこと。結局、定員2人が最も合理的だという結論に達します。まあ、普通に考えれば当たり前のことなんですが、手段が目的になったり、木を見て森を見ずになったりすることは自分の経験で何度もありました。この後に説明される限界効率の問題も面白かった。

最後の章には不確実性のもとでの意志決定の話が出てくる。結局、世の中では不確実なことが大半なのでここが一番重要なのですが、できるだけリスクを少なくする合理的方法というものが書かれています。

いくつかの選択肢がある時、どれが一番お得かということの根拠を探す方法をこの本では教えてくれます。どれがお得か分からないからだいたいで決めたり、直感的に決めたりすることが多い自分にとってはありがたい本であります。定量分析ってよく聞くけど、もひとつなんのことかわからないってな人にもお勧め。