【書評】戦略プロフェッショナル


拷問読書

今週1冊目。累計71冊目。著者はBCG日本支社の日本人コンサルタント第一号。本書のテーマは大企業の企業再生で、実際にあった話を元にストーリー形式で書かれています。大企業の話をもとにしているので、スケールは大きいけど結構分かりやすい。内容は特に目新しくもないので、そこまでおもしろいわけでもなかった。ただ、導入部分の戦略コンサルの誕生話や日本で浸透していった経緯はおもしろいです。

●とにかくターゲット絞り

この本で書いていることは、とにかくターゲットを絞ってそこに集中攻撃する課程。戦略論の大半はぶっちゃけこれしかないんじゃないかと最近感じてきた。絞るためには何かを捨てないといけないわけですが、何を捨てるべきかも難しい。ターゲットを絞ると口で言うのは簡単ですが、どこに絞ればいいのか見つけるのが結局大変なんだなと最近は思います。

逆に、絞る要素を見つけられたらどう集中すればいいかだけなので、後は楽っちゃ楽な気もする。まあ、そのターゲットが間違っている場合もありますが。例えば、小さい頃から将来やりたいことが見つかっている人は、そこに絞って努力すればいい。でも、その将来やりたいことっていうのが明確に決まっている人が世の中に何人いるかといえば、ほとんどの人が決まってないのではないかと思うわけです。

判断材料がない状態でやりたいことを見つけられるわけはないので、いろいろなことを経験するという単純な方法しかなかったりする。企業が自社のターゲットを絞る時もまずは市場調査であったり、仮説を元にしぼった箇所に挑戦して試したりとまったく一緒。将来働きたい業界がある程度決まったら、その業界が本当に自分に合っているかを研究しないといけないわけだし。

ということで、戦略論というのは就職活動をしている学生の人にぴったりのテーマだと常日頃から思うのですがどうなんでしょう。授業をつまらなそうに聞いている学生も、就活や将来の仕事を決める話と絡めると一気に興味が出るはずだと悶々と思っている今日この頃。



●残念ながら削られた泥臭い話

実際にあった話をテーマにしますが、企業との秘密事項は絶対のコンサル的な立場から話自体は綺麗にまとまりすぎているのが残念なところ。実際は、いくら合理的でも組織の体制や古い慣習にこだわる内部との戦いとか、泥臭い政治ゲームとかあったらしい。ここが出版の関係上ざっくりそぎ落とされていて、本書は綺麗な部分だけ書いていると巻末にも書かれています。

戦略コンサルタントといえば企業にやってきて企画や経営方針の立案とかするカッコイイイメージが大きいのですが、実際のところ受け入れ企業からすると偉そうなことをいう外部者がなんかやってきたというイメージが強いらしい。一番難しいのはその信頼関係みたいなものの構築だったり、内部でのもめ事の調整だったりとか。こういうことを外資戦略コンサルの人に最近聞く機会があり、やっぱりそうなんだと最近実感しました。

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。 」という夏目漱石の草枕の有名な言葉がありますが、まさにこれを常に感じるのが戦略プロフェッショナルの方々なんだなあ。