マイケル・ルイスの本に外れなしと教えてもらったので、まずはマネーボールから読んでみました。今週のノルマ三冊目。
軍資金の乏しいメジャーリーグの球団アスレチックス。このチームがなぜヤンキースとほぼ同等の成績を収めることができるのか。その秘密は今までにない科学的な統計、および綿密なデータに裏付けされたチーム作りがあったというお話。
アスレチックスのゼネラルマネージャーであるビリービーン。彼はよその球団が気づいていない重要なデータに目を配り、掘り出し物の選手を安値で発掘する。株式投資の本を読んでいるようで、慣れ親しんだ既存のデータに疑いを持つ重要性を教えてくれる本。
この本を読んだ後には、今まで当たり前のように感じていた野球のデータに対して新しい視点で見ることができて面白い。
・エラー率
エラー率は野球の中で最も主観的で、当てにならないデータらしい。なぜなら、エラー率はグラウンドの状態に大きく左右される。でもグラウンドの状態はデータに表れない。足の速い選手がフライの落下点にいち早く駆けつけ、ファンブルした場合エラーになる。しかし、鈍足の選手が追いつかずにヒットを許した場合はただのヒットになる。
このことから分かるのは、多くの人に受け入れられているが、実は不適切なデータを見破る知恵を身につけることの重要性。他のスポーツでも同じような例がないか考えてみた。僕はサッカーが好きなのでサッカーの例を考えてみる。
たとえば得点。8-0で勝った相手に対する1得点と、1-0で勝った相手に対する1得点はまったく価値が違う。でも得点王争いではどちらも同じ1点として加算される。前者は守備がザルな相手、さらには途中からやる気を失った相手から奪った1点。後者は守備が堅い相手から奪った1点。
もっと厳密に得点の価値を計る方法がないかちょっとだけ考えた。
選手が入れた1点をその試合における自チームの総得点で割る。例えば8-0で勝った試合に入れた1点は0.125ポイント。2-0で勝った試合の1点は0.5ポイントといった形で計算すれば、ストライカーの価値をもっと厳密に計ることができないだろうか?頭のいい人ならいい公式を考えてくれそうだ。
世の中のデータにはあまり信用度が高くないデータがいっぱいあると思われる。(でも大半の人がそのデータを信頼していて、重要な決定をする時に利用する)これを逆手にとったアスレチックスの方法は世の中のいろいろな分野で応用できるはず。
ほかにもいろいろと面白いデータの見方が本書にはいっぱいある。中でも面白かったのが以下の視点。
・ホームラン以外のフェア打球は、ヒットになろうがなるまいが、投手には無関係ではないか?
一般に打球がどこへどのように飛ぶかは投手の責任になっている。しかし本来は、打たれた球がヒットになるかどうかは野手の守備、球場の条件、運に大きく左右される。よって防御率の信用度は低い。反対に被本塁打率、四球率、三振率などは信用度が高いという仮説が書かれている。
確かにエラー率が信用できないデータなら、エラー率に左右される防御率も信用度が低くなる。信用度の低いゴミデータが新たなゴミデータを作るという法則に当てはまりますね。こんな視点で世の中のいろいろなデータを疑ってみる習慣をつけると、本当のようなウソや大きなチャンスが見えてくるかもしれない。