企業の平均寿命は約10年と言われています。そんな中、世の中には幾多の試練を超え、長期にわたって繁栄し続けている会社があったりする。その企業をビジョナリー・カンパニーと呼び、共通点を研究した本。今週のノルマ三冊目。
この本によると組織が長い間生き残るため、もっとも重要なものは、技術でもなく、アイデアでもなく、カリスマ的な経営者でもなく、豊富な資金でもなく、組織に浸透した理念だというのがこの本の基本的な主張。
面白いのは、この本で紹介されるビジョナリー・カンパニーの中には、当初素晴らしいアイデアが特にないのに会社をおこした企業も多かったということ。
以下、印象に残った点をピックアップ。
P13
決定的な点は、理念の内容ではなく、理念をいかに深く「信じて」いるか。
確かに、非合法な裏社会で成功する人にも何か強い理念があるような気がします。どんな分野でも飛び抜けた存在の人には理念があるかもしれない。
P14
あとから見れば、実に先見の明がある計画によるものに違いないと思えても、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」方針の結果であることが多い。
これは種の起源の概念とまったく同じですな。振り返ってみると、自分が受験勉強した時もいろいろな勉強方法を試しまくりました。記憶が定着しやすいは寝る前だとか、忘却曲線にそって復習をするとか、朝には数学系をやればいいとかいろいろ本には書いてありました。
でも、一番自分に合っている方法がなにか自分にしか分からない。それを探すにはたくさん試して試行錯誤するしかなかったりします。その結果、他人にとっては馬鹿げたアイデアでも自分にとってはベストな方法とかが見つかったりします。
ちなみに自分の場合は1ページづつ問題集を破って、一番リラックスできる状態(寝ながらとか)で読んでいく。というやり方でした。現時点で自分に一番向いてる勉強方法は、「ストレスがかからない、継続できる方法」だと思っています。
P46
ビジネス・スクールでは、経営戦略や企業に関する講義で、何よりもまず、すばらしいアイデアと、綿密な製品・市場戦略を出発点とし、次ぎに、「機会の窓」が閉まる前に飛び込むことが大切だと教えている。しかし、ビジョナリー・カンパニーを築いたひとたちは、そのように行動したわけでも、教えてわけでもなかったことが多い。重要なのはあきらめないことであり、あきらめないのは会社である。アイデアはあきらめたり、変えたり、発展されることはあるが、会社は絶対にあきらめない。
簡単にいうと、絵に描いた餅より、アイデアはしょぼくても実行する熱意がもっとも重要だということですな。
P115
重要なのは、企業が「正しい」基本理念や「好ましい」理念を持っているかどうかではなく、企業が、好ましいにせよ、好ましくないにせよ、基本理念を持っており、社員の指針となり、活力を与えているかどうかである。
理念のない会社は駄目だと本書には書かれています。理念だけあっても、浸透して実行されていなければ駄目だとも書かれている。
P116
人々はある考え方を公言するようになると、それまではそうした考えをもっていなくても、その考え方に従って行動する傾向が際だって強くなる。
本当に実現したいことは、まわりの人に公言して、紙に書いて、その誓いを忘れないように毎日暗唱しろ!ってよくある啓発本にも書いてありますね。
P155
本物の目標は明確で説得力があり、集団の力を結集するものになる。そういうものは人々の意欲を引き出す。人々の心に訴え、心を動かす。具体的で、わくわくさせられ、焦点が絞られている。誰でもすぐに理解でき、くどくど説明する必要はない。
ケネディが言った「月に行く」という目標がよい例として書かれています。具体的でイメージしやすいものは相手に伝わりやすいですな。
数年前、僕は自分のサッカー好きをアピールする時に「マンUの試合を全試合見てます!」
と言ってました。これは「海外サッカーの大ファンです!」より分かりやすく具体的なんじゃないかと思って使った方法。まあ、最近は忙しくて試合が見られないので使えませんが。。
P363
ビジョナリー・カンパニーの素晴らしい点をひとつ指摘することなどできない。重要なのは驚くほど広範囲に、驚くほどの一貫性を、長期にわたって保っていくことである。優れた芸術作品が傑作だといえるのは、作品全体が素晴らしく、すべての要素が積み重なってできあがった全体的な効果のためである。
小さなことにこだわり、細部まで理念を浸透させることで全体が輝くということが書かれています。
P375
基本理念は、「つくりあげる」ことも「設定する」こともできない。基本理念は見つけ出すしかない。内側を見つめることによって、見つけ出すのである。基本的価値観と目的は心の奥底で信じているものでなければならず、そうでなければ基本理念にはならない。
人からの受け売りとかじゃなくて、自分が一番信じられる理念を考え抜いて見つける作業が重要ということですな。
ちなみに、この本に書かれているビジョナリー・カンパニーはどれも何十年も生き残ってきた企業ばかり。なので、初代の経営者が引退しても企業精神が後継者に生き残っている組織を選び抜いています。
経営者個人ではなく会社自体に理念が強く浸透していて、後継者を育てる努力は、企業が長期に渡って生き残るのには不可欠なことと書かれている。このことから興味深いのがアップルの将来。
最近、アップルのスティーブ・ジョブスの健康が不安視されています。ジョブスが追い出されたアップルは業績が悪化した過去があるだけに、ジョブスが引退したらどうなるんだろう。
アップル社員には「ジョブスだったらどうするだろう?」という考え方が浸透していると言われていて、ジョブスが引退した後も大丈夫とアップル側は言っていますがはたして。