【書評】アフリカ 苦悩する大陸


拷問読書

今週1冊目。累計89冊目。貧困といえばアフリカをイメージしますが、どれだけヤバイか、なぜヤバイか、どうヤバイかがわかる本。

去年読んで最高におもしろかった「銃、病原菌、鉄」という本によると、格差を生み出した究極の要因は環境の違いということでした。時代が進んで科学が発達し、環境の違いを克服できるようになったかというそうでもないみたいです。

豊かな人々が集まる地域にはどんどん豊かな人が集まり、貧困層が集まる地域はますます貧困が進んでいく。これを解決するために世界各国がいろいろ援助活動をしたりしていますが、援助資金が独裁者の財布に入るだけであったり、援助することによって貧困が進むという逆効果も生まれてしまったりと問題は複雑です。



■独裁政権を生む海外からの資金援助

白人から自由を勝ち取る解放戦争ののヒーローだったジンバブエのムガベ大統領。この大統領の独裁政権では自由な意見も平等な選挙も皆無。村を焼き払い、投票者全員をレイプするという規模で野党の選挙妨害が繰り広げられるという悲惨な状況。

経済活動も基本的には海外からの援助で賄っている。国内で起業家が出てきたとしても、厳しい規制と利権を吸い取る政治家の妨害にあって、新しい経済活動が生まれない。「不道徳教育」という本では、援助資金を送れば送るほど、貧困国は自分で経済活動を生み出す理由がなくなり貧乏になるという考えが書いていた。まさにそのことが現実で起きている国。

ここで思ったのは、むやみに公共事業の資金援助をしても逆効果を生むから、教育事業と医療をメインにした援助がもっとも合理的なんではないかなと。自国で経済活動が破綻しても独裁政権が続けられるのは、海外からの資金援助が最大の理由。

これがなくなれば経済が破綻するので自動的に独裁政権も崩壊せざるをえなくなる。自主的に経済を立て直すには、規制を緩和した民主的な国家作りが近道になると思うのです。

■なぜエイズの広がりを止められないか

単純に避妊の知識がない、処女とセックスすればエイズが治るという迷信を信じる人がいるといったような理由もある。でも、根本的な理由は他の国の人に比べてエイズ感染のリスクが相対的に小さいから。

つまり、常に死と隣合わせで生きている人たちにとって、エイズに感染するリスクよりも、目の前の快楽であったり、目の前のお客からお金をもらうほうが重要となるようです。

例えば、一年後に死ぬ確率が5割くらいある人にとっては、エイズに感染するリスクよりも目の前の快楽を選んだほうが合理的。ここでも貧困の悪循環が働いてたりする。

■黒人労働者保護が失業者を増やす

アパルトヘイトが終わり、黒人労働者を保護する法律を作った南アフリカ。この法律により、黒人労働者の失業率が劇的に増えるという皮肉な結果になる。ここのくだりは、日本の解雇規制と失業率の関係とそっくりです。

黒人を雇う時は法律で決まった最低賃金以下で働かせてはいけない。でも、教育水準が低い黒人をその賃金で雇うと基本的に企業は赤字になる。さらに、いったん雇うと解雇規制が法律で定められているので解雇もできない。

結果的に、半分の給料でも喜んで働くという黒人たちが大勢いるのにもかかわらず、黒人を雇う余裕のない企業が大半となり、失業者が増えるという仕組みが出来上がったそうな。

貧困を解決するには、経済的な観点から解決するしかないなと思うよい本でした。