「史上最強の哲学入門」は死ぬほどわかりやすい


史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)

前から哲学に興味はあったんですが、どの本から読み始めればよいのかよくわからなかったわけです。「哲学で博士号取る予定の俺が、どんな質問にも哲学的に答える」とか読んだら、「そうだったのか現代思想」という本が紹介されていた。

この本も読んでみたけどやっぱり固い。ちなみに、最近流行った「これからの正義について考えよう」は素晴らしくわかりやすかったけど政治哲学オンリーなので、哲学全般とはちょっと違う。そんなもんもんとしている時に、大好きなグラップラーバキを表紙にした「史上最強の哲学入門」を友達に教えてもらった。これだと思いました。

■格闘技漫画のパロディで哲学を語る

グラップラーバキは格闘技漫画で、さまざま名台詞がある。例えば、さまざまな合気道の伝説的達人をモデルにした達人を登場させて、「達人は保護されている!!」とかアナウンサーが言っちゃったりするわけです。それで、漫画でその達人対レスリングメダリストが対決したりする。

こういった、バキ好きならたまらない台詞と共に、難しい哲学をまぜこぜにしている本書なのですが、それが驚くほどマッチしていて本当にわかりやすい。バキ好きなら三倍楽しめるけど、語り口調が面白いので、漫画を知らなくても十分楽しく哲学が学べると思う。

■哲学の発展の歴史を体系的にまとめている

この本の素晴らしいところは、時代ごとに発展していった哲学の歴史を体系的にまとめ上げているところ。ソクラテスの時代から、プラトン、アリストテレスに移っていって、前者の考えた真理を後の人が否定して新たな真理を考え出すといった系統がわかる。

こうやって、ある考えを作り出した人に後の人が「それは間違っている!」と新たな真理を作りだす。さらに、その後の人がまた矛盾点などをついて新しい真理を作り出し、、といった感じでほぼ無限ループ状態で終わりがないなあといった感じ。

こうやって、歴史の順番にそって有名な哲学者を紹介し、それぞれの考えと今までの考えへのつっこみをおもしろおかしく紹介している。これを読んでいくと、歴史と対立構造の簡単な概念が本当にわかりやすく読めちゃうわけです。うーむ、本当に凄い。

■ソクラテスの最強のディベート術

受験参考書で「実況中継シリーズ」といったものがあったけど、難解なものは特に簡単な言葉で説明してくれるとわかりやすい。この本に難しい言葉はないし、なにより面白い。笑える。

例えば、ソクラテスの必殺ディベート術「相対主義」の紹介がまた面白い。当時最強の論客たちに論述で対決したソクラテスが駆使した必殺技。

彼はまずバカのふりをして出て行き、「今、正義って言ったけど、正義って何ですか?」という具合に相手の質問をするのである。それで相手が、たとえば、「それはみんなの幸せのことだよ」などと答えたら、「じゃあ、幸せって何ですか?」とさらに質問を続けていく。

これを繰り返せば、相手はいつか答えにつまるようになるだろう。そこで、すかさず「答えられないってことは、あなたはそれを知らないんですね。知らないのに今まで語っていたんですね(笑)」と思い切りバカにするのである。

とまあ、こんな感じで、それぞれの哲学者と得意とした必殺技も説明して、キャラを立たせている。最後の「存在の真理」だけはさすがに難解だけど、「真理の真理」、「国家の真理」、「神様の真理」までは本当にわかりやすい。この本はもっと評価されるべき!

■この本に関する他のブログのオススメ書評

バキみたいな哲学入門書 「史上最強の哲学入門」
表紙とか目次とか中身の写真が豊富。

飲茶『史上最強の哲学入門』
作者の労働に関する考えを引用している。

ライティング斉藤のブログ
グラップラーバキとのコラボに焦点を当てている。