【書評】アイデア系最強の古典 「アイデアのつくり方」


アイデアのつくり方
40年ぐらい前に書かれた本でめちゃくちゃ薄い本。30ページぐらい。未だにアイデアの考え方の名書と言われているらしい。図書館で借りて読んでみたら、本当によかった。びっくりした。

著者はアメリカの広告業界の伝説的人物らしい。アイデア系だと広告業界の人が本当に多いですな。アイデアを売る職種だから当たり前といっちゃ当たり前なんですが。

アイデアに悩むまでの過程

最近、次に作るWebサービスを何にしようか真剣に考える時間を取ってみた。というのも、今まではボンヤリとアイデアはいくつかあったので、決定的に欠けていた実際にそれを作るプログラミング技術の習得に集中していたわけです。

そんなわけで、あまりアイデアを練るということには時間をかけてなかった。そんなものは、作りながら「ああでもない、こうでもない」と練り直していけばいいんじゃないかと思ってたからです。

しかし、休講メールとerabunという微妙なサービスを連発して作ったおかげで、もうちょっと企画段階にじっくり考える時間を取ろうと考え直しました。

そこで、おもむろにテキストエディタにいろいろ書いていって、よさげなものに絞って調査を繰り返していくと、今までよりは圧倒的にいいものがたくさん浮かび上がることが実感できた。なんで今まで適当にやってきたんだろうか。。

ポールグラハムが「アイデアに価値はない」とか余計な事を言ってたのも原因だ!

アイデアは必要ない?

自分はPグラハムのエッセイが大好きなのですが、その一つにスタートアップの始め方というものがある。ここには、すごいアイデアは必要ないと書かれている。簡単に言うと、グーグルもFacebookも当初のアイデアはどこにでもあるものであった。

でも、アイデアやビジネスモデルは成長するにつれて変わっていくから、最初からそんなことを気にする必要はない。それより実行が一番重要だと書いている。まずは実行、そしてトライアンドエラーで多くの失敗をし、サービスを良いものに磨き上げるのがいい方法だと。

最初にこれを読んだ時は結構衝撃を受けたのだけど、すごく納得できる話です。いいアイデアというのはそこら中に転がっているけど、それを実行できる能力や技術やインフラや時間を持っている人は極端に少ない。さらに、実際にやる気を出して実行する人となるともっと少なくなる。

そして、最初はやる気でも、途中で飽きたりやる気をなくすパターンが大半。こう考えると、確かに初期のアイデアより実行のほうが重要だと思う。

ただ、実際に始めるのは他ならぬ自分なので、「自分が夢中になれるアイデア」を最低でも考えないといけないと思う。実際はくだらないアイデアでも、やる気になって続けることができる「自分がナイスだと思えるアイデア」を最初に考えるのは重要なんじゃないかと思ったわけです。

前置きが長くなったけど次からが本題。

アイデア出しのフレームワークって本当に役に立つのか?

さて、もう少しアイデアを出すことに時間をかける決心をしたわけですが、どうすればよいかはあまり分からない。今までは、普段からいろんなことに興味を持って、常に考え続ければよいだろうと単純に考えていた。そうすれば、ぽんっと新しい考えがそのうち浮かんでくるんじゃないかなと。

「考具」とかアイデアフレームワーク系の本をいくつか読んだことはあるにはあるけど、なんだかめんどくさそうだなあとしか思ってなかった。

そもそも、質より量で書き出していっても、結局は自分の経験値の範囲内でしか考えは浮かびあがってこないし、特にそれを組み合わせてくれる人がいない時は無駄なんじゃないかなとか思ってたわけです。

木から落ちたリンゴに洞察を得たニュートンも、彼女とドライブしてる時にDNAの発見をしたマリス教授も、どちらも閃きが得られた時にシコシコと紙と鉛筆でリストを作ったりしてなかったし。

そういった細々とした疑問に、本書はすごく簡単かつ簡潔に説明していて素晴らしかった。

ようやく次から本の内容紹介。

アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ

まず、これが大切な事実として書かれています。真に独創的なアイデアというのは存在せず、すべて既存のものからなる組み合わせだと。つまり、パクって組み合わせろってことですね。

これはよく言われていることだけど、特に既存の情報収集の部分が重要となるらしい。たぶん、一番時間がかかるからだろうと思う。

ここはよく言われることだけど、次の説明こそが単純明快でよかった部分。

アイデアが生み出される過程

1 データ収集
2 データの咀嚼
3 データを寝かせる
4 ひらめきの瞬間
5 アイデアの実行とチェック

1のデータ収集は自分がやりたいことに対する情報を念入りに調べる段階。ここを大多数の人はすっ飛ばして、いきなり4から入ろうとする。最も重要な部分であり、ここがキモとなる。

2のデータの咀嚼は、1で得た情報からどうやって新しい組み合わせを思いつくかのテクニック的な部分。おそらく、売られているアイデア出しの本はここを扱ったものが大半だと思う。よくあるカード使ったり、フレームワークを駆使したりといったやつ。

そんなテクニックだけでいいアイデアが出たら苦労しないだろうと思ってたけど、この単純な5つの過程の1要素だと考えるとすんなり受け入れられた。たぶん、ここが一番格好良くて、複雑な秘密のテクニックとかを考えだしやすい分野だから本にしやすいんだと思う。

3は違うことをしたり、寝たりしてアイデアが熟成されるのを待って、なにかのきっかけで4が訪れるというパターンが非常に多いとか。すべては、1と2の段階でどれだけ時間をかけたかに比例する。

そうやって生まれたナイスなアイデアも、5の実行にうつしてみると、大半は自分が思ったよりナイスじゃなかったというオチがついてくる。ここから本当によいものにしていくかは、どれだけ情熱を持って実行を続けるかにかかってくるはず。

すごくわかりやすいけど、アイデアの生成過程をここまでシンプルにわかりやすく、何よりペラペラのすぐ読める本にまとめた本書は凄い。

また、「アイデアとは既存の要素の組み合わせ以外の何ものでもない」とも書かれている。つまり、パクリまくって新しい組み合わせを考えればよいと。

あまりにページ数が少ないので竹内均というお方の解説が載っているけど、この解説もかなりいい。