【書評】ライアーズ・ポーカー


拷問読書今週1冊目。累計98冊目。この本は最高におもしろい。80年代のウォール街における一流投資銀行の真実を、実際にソロモンブラザースで働いていた著者が実体験をもとにして書いています。

本は内容はいまは亡き投資銀行であるソロモン・ブラザースがひたすら儲かっていた80年代の話。ボーナスに数千万円をもらう社員たちの様子や、ハチャメチャな組織の実態などが描かれている。

著者であるマイケル・ルイスの本では、マネー・ボールが一番おもしろく、「ネクスト」「ニューニューシング」は期待したほどではなかったのですが、この本は「マネーボール」と肩を並べる内容だった。

有名作家の処女作にハズレなしという法則を再確認。さらにいうと、「さらば、財務省」のように著者自身が実際に組織にいた経験から書いているのも大きい。ここまで内部事情を暴露しちゃっていいの?って思うぐらい赤裸々に書いているのも「さらば、財務省」と同じだし、だからこそ飽きずにぐいぐい引き込まれてしまう。

この2つの本で共通していたのは、どちらの作者も組織を追放されても食いぶちがあったこと。「さらば、財務省」の高橋氏は財務省に戻れなくても生きていける十分な専門知識を持っていたし、マイケル・ルイスもジャーナリストとして生きていける選択肢があった。

2人ともスーパーエリート達が集まる巨大組織に変わり者として入り、組織から離れても生きていけるという余裕があったからこそ客観的な視点を持つことができたのかも。

ちなみに、今回の世界同時不況を引き起こしたひとつの要因に、エージェンシー問題というのがあります。会社の株式トレーダーや債権トレーダーは損をしても全額責任を負うわけではなく、それならひたすら大勝負をしたほうが合理的になってしまうというやつ。

本書は債権トレーダーの話なので、顧客のお金でガンガンリスクをとって失敗したら顧客が破滅するといったモロにエージェンシー問題な場面もたくさん出てくる。投資銀行業界に興味がある人でもない人でもこの本は楽しめるはず。年収数千万円を稼ぎ出す投資業界のスーパーエリート達の実態を垣間見れます。