「ザ・クオンツ」はブラックスワン並の傑作


ザ・クオンツ  世界経済を破壊した天才たち
クーリエジャポンで紹介されていたので、とりあえず期待して読んでみた。結果は、期待値はそれなりに高かったのに想像以上の傑作でした。ブラックスワン並というのはちょっといいすぎかもしれないけど、ブラックスワンの続編みたいに楽しめる。タレブも登場するし。

市場は効率的か?

「ウォール街のランダムウォーカー」という株式投資の古典的名書があります。それには、株式市場は効率的なので、成功している投資家は運の要素が強く、市場に実力で勝つというのは幻想だという基本的な考えがあります。

僕は7年前ぐらいにこの本を読んで、株式投資とか自分には無理だなと諦めてINDEX投信をドルコストで積み立てするという手堅い戦略をやっていたわけです。

市場効率仮説の考え方は簡単で、「道端に千円札が落ちていれば誰かがすでに拾っている。だから、道端に落ちている千円札を探す行為は時間のムダ。市場は効率的なので儲けるやり方が見つかっても、すぐにみんなが真似して必勝法はなくなる。」という考え方。

ただ、ウォーレンバフェットとかは「市場が本当に効率的なら俺はそこらへんでバイトするよ」みたいな考え方していたりする。この本に出てくるとびきり頭がよくて、高度な金融工学を駆使して年に数十億円を稼ぎ出すクオンツ達も市場の穴を見つけ出し実際に一儲けする。(暴落でそれらのお金を吹き飛ばすけど)

市場が効率であるなら、非効率を修正する存在が必要

市場効率仮説にはひとつの矛盾がある。それは、市場が効率であるなら、市場の効率性を促す役目を担うものが不可欠だということ。つまり、落ちた千円札を拾う人物がいなければ市場は効率的に動かないということです。

この市場の穴を高度な数学を駆使したシステムトレードで素早く見つけ出し、アービトラージやブラックショールズモデルなど、いろいろなさや取りで莫大な資産を築き上げるのがクオンツ達です。

簡単に言うとマネーゲームなんですけど、金融市場に流動性を持たせるという意味ではよいことをしているとも言えなくもないわけです。右から左にお金が素早く回るのを手助けするのは活発で効率的な市場を作るのには貢献する。

ただ、あまりにもトレーダー達がリスクを取りすぎ、それがエスカレートして市場が暴落した時、ダメージが世界的に飛び火してしまうというリスクがあったと。

ブラックジャック必勝法を編み出したソープも登場

本書では、クオンツ達の奇想天外な性格もさることながら、クオンツ手法の土台を気づいたエド・ソープのエピソードもたくさんあって本当に面白い。エド・ソープといえばブラックジャック必勝法のカードカウンティングを編み出した数学者。これは「天才数学者はこう賭ける」というパウンドストーン先生の傑作本で詳しい。

このエド・ソープという数学者は本当に金儲けが大好きらしく、ラスベガスの必勝法を数学的に編み出したり、株式市場の必勝法を研究したりと、学者的な研究もやりつつ金儲けに直結することばかりやる愉快なお人です。

そして、現代の金融危機を生み出したクオンツ達のトレーディング手法の土台を作ったのもエド・ソープであることがこの本で詳しく書かれている。しかし、当のソープ自身は、株式市場は人間が関係して予測不可能な出来事が常に起こると確信していた。だから、金融崩壊前にも警告をしていたし、自身もしっかり身を引いていたのが凄い。

中盤、絶好調のクオンツ達を攻撃するタレブ登場

この本の中盤には、「ブラックスワン」で一躍世界的に有名になったタレブも登場する。タレブは統計的にありえないだろうと思われている金融崩壊が、実際は統計学者が思うより頻繁に起こるであろうと予測し、マーケットの崩壊に賭ける投資家です。今回の金融危機で大もうけした一人。

タレブは絶好調のクオンツ達にたいし、「君たちはリスクを取っているのだから、いずれ大損する時が必ず来る」と警告していた。タレブのブラックスワン理論を使ったファンドは現在、金融危機に政府が救済措置をしてハイパーインフレが起こる可能性にお金を賭けているのだとか。

元FRB議長グリーンスパンの敗北宣言が本書の最大の山場

グリーンスパンといえば、市場効率仮説の信奉者で根っからのリバタリアン。これは「波乱の時代」を読めばよく分かる。アダムスミスの神の見えざる手の信奉者です。この人の信念は簡単で、市場は効率的だから、できる限り規制緩和すればマーケットは上手くいくという考え方。

この考え方は最初はすんなり受け入れがたいものだけど、経済学を学べば政府の規制がいかにイノベーションや市場を阻害するかよくわかるので、基礎的な経済学の意味では主流なわけです。

そんな市場効率仮説の信奉者のグリーンスパンが、今回の金融危機の後、生まれて初めて市場を野放しにしすぎると失敗するということを、うなだれながらも認めたわけです。ここが本当に凄いところ。小さいころからFRB議長という世界トップの金融のドンになるまで、ずっと信じてきた自分の信念の間違いを公に認めたことになる。

実際どうしたらいいんだろうか

専門家の意見によると、金融崩壊を防ぐのは不可能だからリカバリーをどうするかを考えるしかないらしい。実際、歴史的に金融危機は何回も起こっているけど、金融危機から回復するスピードは速くなっている。

この本の最後でも、金融危機後にまたクオンツが新たな手法で市場で儲けようとしているところが紹介されていた。とにかく人間はお金儲けしたがるので、もっと凄い金融危機がまた起こるかも。一般ピーポーにできることは、そういうもんだと考えておくのが精神安定上よいかもしれない。

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「バイラル・ループ」は読まないと損する


バイラル(口コミ)をいかに発生させる仕組みを作るかという本。バズマーケティング自体はそう目新しいものではないので、そんなに期待せずに読んでみたら予想以上によかった。

バイラルを利用して成功したサービスを解説している

本書では、最近成功したWEBサービスがいかに口コミを発生させたかの事例が数多く載っている。facebook、HotorNot、Paypal、など有名なものからあまり日本では知られてないイギリスのSNSの事例など。

読み進めていくと、近年成功したWEBサービスほぼ全てがバイラルを発生させる要素を含んでいることが分かる。

例えば、Twitterでfollowする人を薦めてくる機能もそうだし、Twitterというサービス自体、ユーザーが友人に利用を勧める強いインセンティブを持っている。最近では、ユーザーが自ら参加者を集めるインセンティブを持っているグルーポンもよい例。

バイラルを発生させる秘訣が書かれているわけではない

バイラル係数とか小難しい単語を使用しているけど、この単語自体に大きな意味はない。バイラルを発生させる秘密が書かれているわけでもない。単純に、バイラルを利用して成功したWEBサービスの事例を数多く解説している本。

ただ、成功事例を読んでいるだけなのに、自分がサービスの設計とかを考えている立場だといろいろなアイデアが出てくる。

例えば、ユーザーが一人で満足するようなサービスよりも、周りに勧めてユーザーが増えると自分にも利益が出るシステム設計を強く意識できるようになった。よいサービスを作ればユーザーは周りに勧めたくなるものだけど、それだけでは評判が広まるスピードが遅い。

いかに、ユーザーが周りを巻き込むインセンティブを作り出すかという仕掛け作りが大切になる。本書では単純に成功事例や、様々な仕掛けを解説しているだけだけど、それでも最先端のマーケティング手法のヒントがたくさんあって面白い。

コミュニティ機能がなくてもバイラルは可能

この本を読むまでは、WEBサービスにはコミュニティ機能が重要だと思っていて、それと口コミマーケティングは同種のものみたいに考えていた。両者は密接に関わっているけれど、それぞれ分けて考えたほうがよいと思う。

たとえば、ペイパルはコミュニティ機能が強いサービスではない。けど、周りが使うと自分も便利になるというバイラル要素を持っている。このへんを本書を読むまでごっちゃにしていたので、上手いこと整理できてよかった。

ロングテール、フリーと同じぐらい重要

サービスを設計する人が役に立つ本として、ロングテールやフリーと同じぐらい必須の本だと思う。どの本も内容を一言で説明してしまうと至極単純だけど、様々な事例を読み進めていくうちに頭の中が整理されていく。そういう意味で3冊とも凄く似ている。

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「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」は期待外れだった!


著者の橘玲が書いた「不道徳教育」というリバタリアン入門本は、自分が自由主義思想に目覚めるきっかけになったし、「マネーロンダリング入門」も名作だった。前作の「貧乏はお金持ち」では、いかに賢く節税して国からの援助を搾取するかという指南書でこれもよかった。

なので、今作も相当期待して読み始めたんだけど、自分の期待がでかすぎたのか期待外れの本でした!

■本書のテーマは「やってもできない」

最初の自己啓発ブームの考察は面白い。勝間本は「やればできる!」と煽るけど、人は変われないし、そもそもの能力は遺伝的にほぼ決定しているというのが著者の主張。勝間ブームに意をとなえた香山氏との対決の考察はそれなりに面白い。

自己啓発なんて読んでも大抵の人には意味ないっていうのはその通りだし、それを踏まえてどうすれば残酷な市場社会で生きていくかというテーマはそそられる。

でも、人の能力が遺伝的に決定しているという主張の科学的根拠の事例が結構浅い。この考えには科学者の間でもよく対立するトピックで、素質はどの程度まで遺伝するかというのは科学者によって意見はまちまち。

ここは「黒人はなぜ足が速いのか」とか、「非才」とかそっち系の本のほうが、様々な科学者の主張や反論が載っていて面白い。

■途中から普通の市場原理の説明になる

日本独自の自己啓発ブームに対する考察、それでも人間は変われないという前提のお話は結構面白い。さらに、好きを仕事にしても好きを十分なお金儲けにできる人は一部という説明が続く。

ただ、このへんの説明はいろいろな経済書とか、グローバル化社会を論じた本でもよく書かれている、マグレブ型社会とか、オークションの経済学とか、そっちの話なので特に目新しいことがない。

問題は、本書のキモの「自己啓発しても人は変われない。そして、好きを仕事にしてもお金持ちには普通はなれない。じゃあどうすればよいか?」という部分。

このトピックで煽っておいて、幸せは相対的なものだから、お金持ちより自分の好きなニッチコミュニティに認められることを目指し、ロングテールを狙って好きからそこそこの収益を得ようっていうだけの話だった。

まあ、結論はそれしかないよねって話で別によいのですが、それに繋げる市場原理の話とか、フリーミアムの話とか、オープンソースビジネスの話とかがどうも全部知っている事ばかりで目新しさがなかった。

■同じ系統の本を読みすぎると発見がない

たまたまそういう本が好きだから、こういう分野の本ではもう目新しい発見がないのかもしれない。なんというか、行動経済学の本を最初読んだ時は凄い感動したけど、3,4冊目になると同じことが多くなってきて楽しめなくなるといった感じに似ている。

やっぱり、最新の科学書とか、最近起こった出来事を詳細に追った本のほうが面白いかも。そういう意味で「地球最後の日のための種子」、「世紀の空売り」、「facebook」、「facebook effect」(洋書)、とかは最新の時事ストーリーですごく楽しめる。

ちょっと話が飛ぶけど、「会社は誰のものか?」っていう普遍的なテーマでは久保先生の「コーポレートガバナンス」が一番最先端の研究事例も載ってて、冷静で客観的な統計分析に終始してまったく感情論が出なくて面白い。

ちなみに、本のタイトルにリンクを貼るのがめんどくさいのでそのままですが、文章を書きながら本のリンクを連動して自動挿入できるサービスを作りたい。

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「世紀の空売り」はマイケル・ルイスの最高傑作


世紀の空売り

金融危機を予測して大もうけしたトレーダー達の話。デビュー作のライアーズポーカーは金融業界の実情を、実際に優秀なトレーダーだった著者が赤裸々に語る本だった。今回の本は現代版「ライアーズポーカー」といったところ。本当に面白い。

ルイスの本は、「ブラインド・サイド」、「ニューニューシング」なども傑作だけど、やっぱり金融業界の事を書かせれば元本職だけあって凄い。

■変人ばっかの登場人物

この本に出てくる人達は変人ばっかり。幼い頃から義眼でひたすら内向的な性格の人とか、人の神経を逆なでするのが趣味みたいな人とか。そのどれもが、サブプライム関連の金融商品が暴落するのを予想し、自分は間違っていないという信念をつらぬいて売り抜ける。

■暴落するのがわかっても、それで儲けるのは難しい

例えば、サブプライム関連商品の詐欺具合とか、こんな事を続けてたらいつか崩壊するのがわかったとしても、それを利用して儲けるのは意外と難しい。まず、いつ崩壊するかのタイミングは分からない。

それまで、空売りするということは簡単に言うとその日がくるまで損をし続ける金融商品を持ち続けないといけない。精神的にもつらいし、なにより豊富な資金力が必要。ヘッジファンドを運営してるなら顧客へのプレッシャーもある。

顧客は儲かっている時はなにも言ってこないけど、損失を出している時はマネージャーへの圧力が凄い。本書の主人公の一人も、サブプライム関連商品が暴落するのを信じて空売りしてたけど、途中で顧客から訴訟まで起こされそうになったりしている。

■サブプライム関連商品の空売りも思ったより難しい

CDSという金融商品を利用して主人公達はサブプライム関連商品を空売りしたわけですが、これが当初はなかなか取得できない。まず、市場が崩壊した時に生き残ってそうな大会社じゃないと空売りしても意味ない。

そうなると、ゴールドマンサックスとか大手銀行から買うしかないわけだけど、大口顧客じゃないとなかなか相手してくれない。いかにCDS関連商品を手に入れるかという駆け引きも面白い。

■市場は効率的ではないかもしれない

株式投資の教科書「ウォール街のランダムウォーカー」では株式市場は効率的だから儲けようとしてもムダだと書いてある。ただ、今回の話は債券市場。債券市場は株式市場より規制が緩く、詐欺同然のサブプライム関連商品が普通に売られ続けて、株式市場より世間の監視もなかった。

この結果、本書の主人公達は大もうけすることができたんだけど、人間が作るものに完璧なものはないっていう証明かもしれない。自分は株式投資も債券投資もやる知識もないし、やる気もさらさらないけれど、いつの世の中も抜け道というものはあるもんだなとしみじみと思った。


地球最後の日のための種子


地球最後の日のための種子
食物の多様性を守るため、世界中の種子を集めて保護する科学者たちの物語。成毛ブログで絶賛されていたので、読んでみたけど確かに面白い。一気に読んでしまった。

■多様性が失われた種はもろい

昔の貴族は親戚やいとこ同士で結婚することもあったので、遺伝子的に子孫に障害が生まれることが多かったと聞いたことがある。馬ゲームのダビスタでも、血が濃すぎる配合を選ぶととたんに怪我がちな子馬ばかり生まれる。

これは血が濃すぎる配合のデメリットだけど、遺伝的に特定の環境に有利な配合を繰り返した結果、遺伝子の多様性が失われると、突然の疫病で一気にすべての生物が絶滅してしまう恐れがあるらしい。

これが現在の、品種改良を重ねられて特定の品種しか世界で育てられていない小麦などの栽培物に当てはまる。この本は、来るべき人類の危機にそなえ、世界中の食物の種子をジーンバンクという地下シェルターのような場所に集めることに命をかけた科学者たちの話。

■将来、人間の多様性もなくなると一気に絶滅しちゃうかも

現在は遺伝子治療や、遺伝子を選んで子供を産んだりといったことはまだ一般的ではないけれど、そういった世の中になった時の危険性がこの本を読むとよくわかる。未来の世界を描いた映画「ガタカ」では、人間はみんな遺伝子を調整されて美男子、美女ばかりの世界だった。

でも、こういう世界で突然疫病が発生すると、一気に人類が絶滅してしまう危険性があるんだなあと思った。とにかく、多様性というのは会社でも、どんな場所でも重要だとよくいわれる。でも、今まではいろんな意見があって、いろんな人がいたほうがいいんですよねみたいな感覚でしかわかってなかった。

でも、生物界の群れのルールとか、多様性を失った小麦が一気に全滅する話とかを聞くと、科学の世界の実際の知見がわかって多様性の大事さがよくわかっていい。

■PRの重要性もよくわかる

本書の主人公のスコウマンは、当初とにかく世界から飢餓をなくすという思いだけで活動していた。その時、まったくマスコミ向けのPRには力をいれていないけど、晩年になってようやくその重要性に気づく。とにかく、全世界の一人でも多くの人が、多くの食物の種子を守るという重要性に気づかないと人類の危機だと気づくかないと、失ってからではもう遅い。

となると、最近はやりのエバンジェリストという職業の大事さも痛感するなあと思った。研究者と、その功績を世に広める人が必要なんですね。


本を厳選してWEB本棚を作ってみた


ブログで本の感想書くのは数冊読んで、気が向いた時だけなんですが、今までの本でこれは殿堂入りだろうというものを集めて本棚を作ってみた。

オススメ本を厳選した本棚

■WEB本棚サービス選別の経緯

前からいろいろなWEB本棚サービスを調べていたけど、気に入るのがなかった。特に自分のアフリエイトが貼れないとやる気も8割ダウンになるのに、そういうのが多かったのです。しょうがないから自分で作っちゃおうかなと思っていたら、普通にアマゾンのストアサービスが使いやすかった。

■WEB本棚は最高のオナニー

元々、本棚っていうものは「どうだい僕の本棚は。フフフ。いい趣味しているだろう?」とドヤ顔でオナニーするためにあるものなのです。しかし、うさぎ小屋に住んでいて、本棚がひとつのスペースしかない自分としては本を買って売ってを繰り返すしかない。

そんな中、WEB本棚は全世界に自己満足本棚を公開できる素晴らしいサービスなわけです。電子書籍が普及していく今後、かなり流行ると思う。

アマゾンのやつは双方向のコミュニティ機能がないけれど、まあそれはよしとして、本ごとにコメントを付けられるのがナイス。


「史上最強の哲学入門」は死ぬほどわかりやすい


史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)

前から哲学に興味はあったんですが、どの本から読み始めればよいのかよくわからなかったわけです。「哲学で博士号取る予定の俺が、どんな質問にも哲学的に答える」とか読んだら、「そうだったのか現代思想」という本が紹介されていた。

この本も読んでみたけどやっぱり固い。ちなみに、最近流行った「これからの正義について考えよう」は素晴らしくわかりやすかったけど政治哲学オンリーなので、哲学全般とはちょっと違う。そんなもんもんとしている時に、大好きなグラップラーバキを表紙にした「史上最強の哲学入門」を友達に教えてもらった。これだと思いました。

■格闘技漫画のパロディで哲学を語る

グラップラーバキは格闘技漫画で、さまざま名台詞がある。例えば、さまざまな合気道の伝説的達人をモデルにした達人を登場させて、「達人は保護されている!!」とかアナウンサーが言っちゃったりするわけです。それで、漫画でその達人対レスリングメダリストが対決したりする。

こういった、バキ好きならたまらない台詞と共に、難しい哲学をまぜこぜにしている本書なのですが、それが驚くほどマッチしていて本当にわかりやすい。バキ好きなら三倍楽しめるけど、語り口調が面白いので、漫画を知らなくても十分楽しく哲学が学べると思う。

■哲学の発展の歴史を体系的にまとめている

この本の素晴らしいところは、時代ごとに発展していった哲学の歴史を体系的にまとめ上げているところ。ソクラテスの時代から、プラトン、アリストテレスに移っていって、前者の考えた真理を後の人が否定して新たな真理を考え出すといった系統がわかる。

こうやって、ある考えを作り出した人に後の人が「それは間違っている!」と新たな真理を作りだす。さらに、その後の人がまた矛盾点などをついて新しい真理を作り出し、、といった感じでほぼ無限ループ状態で終わりがないなあといった感じ。

こうやって、歴史の順番にそって有名な哲学者を紹介し、それぞれの考えと今までの考えへのつっこみをおもしろおかしく紹介している。これを読んでいくと、歴史と対立構造の簡単な概念が本当にわかりやすく読めちゃうわけです。うーむ、本当に凄い。

■ソクラテスの最強のディベート術

受験参考書で「実況中継シリーズ」といったものがあったけど、難解なものは特に簡単な言葉で説明してくれるとわかりやすい。この本に難しい言葉はないし、なにより面白い。笑える。

例えば、ソクラテスの必殺ディベート術「相対主義」の紹介がまた面白い。当時最強の論客たちに論述で対決したソクラテスが駆使した必殺技。

彼はまずバカのふりをして出て行き、「今、正義って言ったけど、正義って何ですか?」という具合に相手の質問をするのである。それで相手が、たとえば、「それはみんなの幸せのことだよ」などと答えたら、「じゃあ、幸せって何ですか?」とさらに質問を続けていく。

これを繰り返せば、相手はいつか答えにつまるようになるだろう。そこで、すかさず「答えられないってことは、あなたはそれを知らないんですね。知らないのに今まで語っていたんですね(笑)」と思い切りバカにするのである。

とまあ、こんな感じで、それぞれの哲学者と得意とした必殺技も説明して、キャラを立たせている。最後の「存在の真理」だけはさすがに難解だけど、「真理の真理」、「国家の真理」、「神様の真理」までは本当にわかりやすい。この本はもっと評価されるべき!

■この本に関する他のブログのオススメ書評

バキみたいな哲学入門書 「史上最強の哲学入門」
表紙とか目次とか中身の写真が豊富。

飲茶『史上最強の哲学入門』
作者の労働に関する考えを引用している。

ライティング斉藤のブログ
グラップラーバキとのコラボに焦点を当てている。


大学の休講をメールで通知するサービス作った


「休講メール」
http://umekun.sakura.ne.jp/qcomail/

夏休みの前半に完成していたけど、授業が始まるのでそろそろ公開。
現在、早稲田大学のオープン科目のみに使えます。

使い方は、受信先のメアドとパスワードを入力して、通知して欲しい授業のキーワードを入力するだけ。後は、放置。

例えば、「バスク語(初級) 吉田 浩美」という授業を取っていたら、「バスク語 初級 吉田」 こんな感じでキーワード入力します。

専門科目は早稲田ネットポータルというログインサイトに入らないと情報が取得できないので、残念ながら使えない!大学側が公開してくれたら簡単なんだけど、セキュリティ関係で無理みたいです。

というわけで、早稲田大学に通っている誰かモノ好きな人、試しに使ってみてください。

ここから情報を自動的に取っているけど、早くも休講決定の授業は結構あります。
http://open-waseda.jp/gakubu/call_off.php


科学は大災害を予測できるか


科学は大災害を予測できるか
地球規模の伝染病とか、ハリケーンとか、隕石の衝突とか、金融危機など全世界がパニックになるような大災害を科学はどこまで防げるかという本。最新の科学の現状と限界がしれて面白い。

■科学は大災害を予測できません

結論からいうと、上記の事柄すべて科学では予想不可能らしい。少しの情報の違いがカオス的に大きな違いになり、予想できる範囲が未知数になるとか書いているけれど、まあ科学が万能でないのは誰もが分かっていること。

ただ、ここまで科学は大災害を予想できないとはっきりと書かれていると、なんとなく大変な事が地球規模で起こっても偉い人がいろいろ考えてるんじゃないか?みたいな、庶民的な考えが通用しないことがよくわかります。うーむ、怖い。

例えば、隕石の衝突はいずれ起こるけれど、いつ起こるかは分からない。もし発見できたとしても、1ヶ月前とか、一週間前とかになる可能性が高いとか。まあ、確率的には自動車事故で死ぬ方がよっぽど高いんですけどね。

■科学者は偉い

印象的なのは、著者の科学への愛がビシビシと伝わってくるところ。災害は予想できないけれど、その対策や予防処置には科学が力になる。作者いわく、「科学者は世界規模の災害を常に考え続けたんだから、政治家はもっとそれを生かせるように頑張れよ!」って言っています。

例えば、最近読み始めた「地球最後の日のための種子」は、世界中の作物の種子を集めて、作物に大災害が起こった時に備える科学者の話だけど、いつでも未来の事を真剣に考えて行動を促し始めるのは科学者なのだなあと実感。

自分の専門分野を研究していくうちに、「うーむ、ヤバイ。これはヤバイ。このヤバさにみんな気づいていない。それがもっとヤバイ」といった気持ちになるんだろうと思う。自分は知っているけど、周りが気づいていない部分を熱く伝えたくなるこの気持ちは誰でもよく分かる気持ちかも。

■でも、科学者でも意見が分かれまくる

問題は、科学者の意見が一致しないところ。温暖化問題でも、人間が原因だという人や、温暖化は地球の自然現象で人間の影響は少ないといういろいろな説がある。科学者たちの意見がバラバラだと、そりゃあ政治家の人もどう判断したらいいかわからない。

トンデモ学説だと思われていたものが、数年たって指示されたりするのはよくあること。多様性は大事だし、それでも重要な決断に科学者の意見が分かれまくっていると困る。悩ましい。

■科学への愛を感じる

著者は科学者の良心も信じている。科学の世界では論文が重要。でも、専門的な論文を審査できるのは、同じ専門分野の偉い人。例えば、論文を審査する人の研究していた課題が、たまたま審査中の論文に答えが載っていたりする。

この時、論文のアイデアをこっそりパクることもできる。こういうことが可能な科学界の問題を指摘していたのを「生物と無生物の間」という本でよく覚えている。

ただ、「科学は大災害を予測できるか」の作者は性善説派。そういうことはできるけど、科学者の大半は良心を持っているからそんなことしないと書いている。さらに、科学者は自らへの評判が命。評判を落とすようなリスクはとらないらしいです。


極限まで好きな事だけして死んだ天才数学者の物語


放浪の天才数学者エルデシュ
「放浪の天才数学者エルデシュ」。

生涯現役で世界中を飛び回り、数学の問題を解きまくった天才数学者の話。80代で死ぬまで数学の問題を解くことにすべてをささげ、結婚もせず、子供も作らず、持ち物も最低限で数学者の友人達の家を飛び回る生活。ここまで自分の好きな事に集中する環境を作り、それを死ぬまでやり通した奇人はなかなかいない。

エルデシュの名前を聞いたのは、受験勉強中に国語の参考書に出てきた時。もっとも多く共著論文を発表した数学者で、共著を発表したというだけでその数学者の権威が上がる。本人は数学者を時間をきにせず訪ね、「君の頭は営業中かね?」という台詞が決め言葉です。

■好きなことだけする環境作りが半端ない

自分の好きな事だけをする環境を極限まで作り上げ、それを死ぬまで実行し続けた人の生涯とはどんなものかなあと興味があったわけです。だいたい予想していたけど、ここまで凄いのは初めて。もう完全に変人枠の中のさらに変人枠の王様といった感じ。

まず、趣味を作らない。持ち物も持たない。そもそもお金を稼いでも、仲間か貧しい人にあげてしまう。住居も持たない。いつも数学者の仲間に家に泊まりに行く。持つのは証明を書き留めるノートと鉛筆、最小限の着替えと粗末なブリーフケース。

数学の問題を解くことに集中する環境を極限まで作っている。そんな人生楽しいんだろうかって思うけど、本人は楽しくてしょうがないんだろうと思う。大人になってからは、コーヒーや薬物で寝ないようにして、何年も毎日19時間数学の問題を解き続け、死ぬ直前ももちろん数学の証明をしていた。これも、本人が望んだ死に方だったそうな。

■幸福を追求するには?

周りと合わせようとすると、その分ストレスがかかり、自分の望む幸福人生から遠ざかるかもしれない。もしかしたら、万人が認める幸福な過ごし方をいうものを実現し、周りに認めてもらう優越感も楽しいかもしれない。でも、究極に極限まで幸福を追求すると、エルデシュのような生き方になるのかもと思った。

前例とか、周りの目も気にしない。とにかく自分の好きなことを好きなようにやり続けて、それが許される実力を日々重ねていく生き方は真似できないけど凄い。

とにかく数学以外は周りに頼りっぱなしで、家に泊めてくれた友人たちがエルデシュの服の洗濯から身の回りのことまで全部しなければならなかったとか。まあ、天才だから許されるのかもしれないけど、それでも愛嬌と思いやりのある人物で皆に愛されていたらしい。

とは言っても、普通の生活が最高に幸せだと思う人がいたり、いろいろなことをやるのが楽しいと思う自分みたいな人もいるので、極端な一例として読むと面白いと思う。

ちなみに、ここまで書いたけど、まだ最初の数ページしか読んでいない。ただ、この本は間違いなく面白そう。