個人の効用より全体効用を優先できるか


オープンソースとか、レッシグのフリーカルチャー関係の本を読んでる途中で、人は他の人類のために自分の欲を完全に捨てられるのかを考えてみた。

例えば、魔法使いがやってきて自分に画期的な技術能力をくれたとする。例えば、どんなジャンクな食事を取っても健康的に過ごせる薬の開発技術とか。もちろん、副作用はなし。一粒10円ぐらいで非常に安価。この能力を使えば全人類を幸福にできるし、自らの富も創造できる。名誉もえられる。みんなブラボーって言ってくれてみんなハッピーになるわけです。

しかし、この魔法使いはもう一つの選択もくれるとする。この技術を自分にくれるかわりに、次の日から全人類は、その技術の恩恵を自然に最初から持っていたものにできる。つまり、薬なんて開発しなくても常に健康体で食いまくれる力を全員が持ち、みんなそれを当然のこととして生きる社会。

前者では自分で富を創造でき、感謝もされ、人類も幸福になる。後者では、全員に薬を渡す効果と同じなのでより人類は幸福になるけれど、誰も自分がした役割には気づかない。この場合、タダで人類に奉仕して、評判という効用を得るということも一切できない。誰も自分がした偉業は認識しない。

富は稼げなくても社会貢献をして尊敬されたり、評判がよくなったりする効用によって動く人は大勢いるわけです。稼げなくても他人に感謝されると嬉しいし。でも、この問題のポイントはそういうメカニズムも一切発生しないということ。

ちょっと悩むけど、自分だったら前者を取っちゃいそうな今日この頃。前者を取るということは、本当の意味でみんなの役に立ちたいって言えないかもしれない。正確にいうと、みんなの役に立つことで、自分も豊かになりたい、感謝されたいという感じなのかな。


音声認識技術がWEBを爆発的に変えると思う


TwitterはWEB上の情報を爆発的に増やすひとつのきっかけになっていると思う。

なぜなら、今までブログに書くのはめんどくさいけど、つぶやきぐらいなら書き込んでもいいかっていう軽いノリの書き込みが増えたから。もちろん90%以上はどうでもいい情報だったりするかもしれないけど、インターネットは大量の情報から自分に有益な情報をスクリーニングしてくれる技術を持っている。

とにかく、量は質を凌駕すると思うわけです。悪貨が良貨を駆逐するっていう心配はネット上の優れた検索技術が解決してくれるはず。つまり、どんな情報でも人々がぱっと思いついた事を手軽にネットにアウトプットする技術が発達すればネット上の情報は増える。そうなると、ネットの価値がさらに高まる。

この手軽にっていうのが重要で、twitterの登場は大きな役割を占めているはず。今までブログに書くにはめんどくさいなっていう事柄でも、つぶやき程度なら気軽に書き込めるっていうことは非常に多いはず。

しかしですね、twitterも限界がある。いくらiPhoneで入力できたりしても、やっぱり打ち込むのはめんどくさい。このめんどくさいっていうコストが非常に重要で、ちょっとでも楽になると大きな価値がある。そこで、音声認識の登場ですよ。

音声認識エンジンが発達して、自分の喋ったことがほぼ修正の必要なしでテキスト化することができればネット上に気軽にアウトプットできる。それはもう、爆発的に手軽になるかと思うわけです。特に文章の組み立てを後から再編集しなくてよいつぶやき系に合っている。これはもう、WEB3.0と言っていいぐらいの変化が起きるんじゃないかと。外でiPhoneとかしゃべりかけるのは恥ずかしいから、脳内で考えたことを入力できるようになったらまたWEB4.0ぐらいの爆発的変化が生まれそう。

で、今ツイッターアプリで音声認識メールみたいな一番優れていると言われているやつを使ってみたけど、まだまだ認識率が発展途上だと感じました。結局、修正をしないといけないのでそれがめんどくさくなって使わなくなった。グーグルの音声認識は使える。あれは、文章じゃなくて単語さえ認識してくれれば事足りるので、十分実用レベル。すごい。しかし、人前で突然話すのは恥ずかしいという重要な障壁があったりする。。


【書評】秀吉の人心掌握術が凄い「太閤記」


新史太閤記 (上巻) (新潮文庫)

司馬遼太郎マニアの先輩に勧められた本。めちゃオモシロかった。秀吉の幼少時代から天下を取るまでの物語。見所は秀吉の人垂らし術。さらには、信長と秀吉の相性抜群の主従関係です。

■超合理主義の鬼上司、信長

信長は人を道具としてみる。自分に役立つと分かれば身分に関係なく取り立てるし、役立たなければ切って捨てる。合理主義である信長だからこそ、身分の低い秀吉にも出世のチャンスが与えられ、秀吉はことごとくそれをものにしていく。

この主従関係がオモシロすぎる。秀吉は信長を神と思っているけれど、へまをしたり、嫌われればすぐ殺されるという緊張関係を常に持っているわけです。何かを進言する時も、常に信長に好印象を持たれようと計算し尽くし、持ち前の明るい性格を存分に使う。信長がいなければ出世も叶わなかったと、常に死ぬ覚悟で尽くしまくる秀吉の気合いが凄い。

例えば、信長に褒美をやると言われても秀吉はもらわない。貯蓄が増えると信長に警戒されるからです。ひたすら信長命の行動を取り、上司からすると神のような部下。うーむ、これは真似できん。

■人間の感情を重視する秀吉

信長が合理主義派だったけど、秀吉は人間の感情も考慮して動きます。信長は交渉時には、相手は合理的に動くと従うだろうというふうに考えるのですが、秀吉は人間心理を念頭においた行動をする。

結局、感情を軽視した信長は家来に殺されるわけですが、この超合理主義上司の欠点を間近で見ることが反面教師の役割になり、秀吉は感情を重視する政治工作を上達させたのかも。このへんが、人間は合理的に動くという前提の経済人仮説と、不合理な心理も踏まえる行動経済学の発想がだぶります。

■なんでも明るくやる秀吉

秀吉はとにかく明るくいく。出来るだけ嫌われたくない。陰湿な政治工作も明るくやるため、暗さがかすむ。信長は恐怖政治だけど、秀吉は相手の立場をたてまくる。身分や家の歴史というバックボーンがない秀吉は、信頼できる部下も少なく、こういった戦術に走るのは合理的でもあったらしい。

どうも、漫画「花の慶事」で出てくる天下人の怖い秀吉とはイメージがまったく違う。天下を取る部分で終わるので、秀吉の明るく、さわやかな部分を強調した小説でした。


【雑記】アメフト好きはブラインド・サイド読むべき


ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇蹟

Blind Sideはアメフトを題材にしたマイケル・ルイスの本。洋書で読んだ後、アメフトだから日本語版は出ないかなあと思ってたらいつの間にか出ていた。さらに、映画も日本上陸している。

「幸せの隠れ場所」
タイトルからして男性にはつまらなそうな映画であります。

この本はアメフトのレフトタックルという、見えないタックルおよび、マイケルオーアという貧しい少年の見えない物語を掛けて、「ブラインド・サイド」と名付けられている。

クリスチャンの白人夫婦に養子にされた貧しかったマイケルオーアのヒューマンドラマの部分のみが映画化されているみたいです。とりあえず今度見に行きたい。

ただ、映画のイメージでこの本をスルーするスポーツファン、特にアメフトファンがいるかもしれないので、思わず筆を取った次第であります。この本が一番おもしろいのは、ヒューマンドラマの部分ではなく、アメフトの進化を扱った部分。

今まで給料も安く、特に注目されてなかったあるポジションが、戦術進化により、近年は非常に重要視されそのポジションをこなせる選手の年収も高くなっている。

相手チームのクオーターバックを破壊し、スピード、強靱さなどを兼ね備える必要があるレフトタックル。こういったアメフトの進化を科学した内容がメチャクチャおもしろい。ヒューマンドラマの部分はとりあえずおいておいて、この本はアメフト好きもスポーツ好きも絶対楽しめます。

本書の詳しい書評はこっち。

【注】
オーアはOTというオフェンスの選手という指摘をアメフトファンから教えてもらった。
なんか、クオーターバックを守る役割だからディフェンスのイメージを持ってしまっていました。


【書評】適正価格は気分で変る「プライスレス」


プライスレス 必ず得する行動経済学の法則

パウンドストーン先生の最新作。前作「選挙のパラドクス」は最高だった。行動経済学の本は少し飽き気味なのですが、先生の本なら読まずにはいられません。結論から言うと、行動経済学の本としては一番オススメかもしれない。

日本の本にありがちな海外の著作のまとめ的な部分もなく、綿密な調査と、歴史の紹介など、オリジナルな部分がたくさんあってどれもおもしろい。

ただ、やはり、「予想通り不合理」とか、「行動経済学 経済は「感情」で動いている」とか、「その店で買ってしまうわけ」とか、「プロパガンダ」とかそっち系の本をいくつか読んだ後だとどうしても目新しい内容がなくなってくる。そこはしょうがない。そうはいっても他の本にない新しい視点もありまして、そこだけ紹介してみます。

■どれだけふっかけてもよいか?

他の本にはなかった視点として、アンカリングはどれだけ許容されるかという部分。交渉時は最初に大きな額を言うと、その価格が基準になって最終的に落ち着いた価格も相対的に高くなるアンカリング効果があります。

では、常識外れの価格をふっかけてもよいのか?例えば、自分の車を売ろうとしていたとして、いきなり一億円とか、とうてい受け入れられないであろう価格を提示した場合はどうなるか?

実験結果によると、法外な値段を最初につけた場合でも、しっかりとアンカリング効果はあり、最初に一億円を提示した場合と、最初に一千万円を提示した場合では、一億円を提示した場合のほうが最終価格が若干だけど上がったそうな。つまり、めちゃくちゃ高い価格で初めても、そこまで損はしないという実験結果が出たと。

ただ、これは現実的ではないと思う。そもそも、営業の人が冗談のような価格を顧客に提示すると、次回の交渉の席にも立てないかもしれない。相手を怒らせるかもしれない。

自分が就職面接を受けていて「年収いくら欲しい?」と聞かれた場合、法外な値段を言うと職につける確率も下がる。

なので、アンカリングは、高い値段を先に言ってもいいけど、交渉の余地を常に相手に残す必要があるわけで、ここのさじ加減がやっぱり難しいなと。

■アンカリングから身を守るには

本書では、世の中に溢れるアンカリングの数々から、どうやって正常な判断をするべきかという視点でも語っています。そうしないと、簡単に商品価格に騙されてしまう。最初から半額でも、半額の値札を見るとお得に見えてしまう。

本書での勧めは古典的な珍しくもない方法で、じっくりと違う立場になって考えたり、一つの情報で判断しないというもの。

この部分は当たり前なんですが、あらためて考えるとハッとするわけです。よくよく考えると、世の中には「常識」という名のアンカリングで溢れているわけです。何も商品価格だけじゃない。そう考えると、常にゼロベースで考えることの重要性がよくわかるなあと1人で納得してしまいました。

■感情で動いてもよいと思う時がある

最近は、その時の幸福度を追求するには、感情で動く必要もあるなと考えております。例えば、パスタの味。雰囲気のいいレストランで食べると高いし、家でレトルトを食べると安い。上等なピエトロのレトルトなんてかなり美味いから、純粋な味ではあまり変らない。

そうなると、場所代とか、その時の雰囲気にお金を払うんだなと納得できる時もあるわけです。ここはアンカリングとは違いますが。

さらには、やりたいことは出来る限り、やりたいという情熱が一番高い時にやったほうが満足度も高いし、人生も楽しいかと思う。先延ばしにすると、後からだと結構冷めてしまう。


【書評】文系に理系の素晴しさを説く!「理系バカと文系」


理系バカと文系バカ (PHP新書)
文系には理系の良さを、理系には文系の良さを教え、バランスの取れた思考はいいですよという指南書。特に、理系的思考の長所を上手く表現しているので、自分みたいな文系人間にとってはおもしろい。内容はゆるい。

序盤では、文系バカや理系バカのパターンを紹介している。正直、ここの内容はたいしたことないので読み飛ばしてもよし。おもしろくなってくるのは中盤から。理系的な視点はどう役に立つのか。文系的な視点はなぜ必要なのかを語るところ。

特に立ち読みしてでも読む価値あるのが、終盤の「なぜ微分積分が必要か」の部分。ここは別に微分積分の重要性を書いているわけではなく、いかにそれぞれの学問が有機的に繋がっているかを熱く語っています。

物理の土台には数学がある。細々とした事象をすっ飛ばして、一気に人間や経済の動きを学問にしたのが経済学。さらに、昨今の経済学では、人間の不合理な心理も取り入れた行動経済学もある。これは心理学がかかわってくる。この有機的な繋がりを説明する部分が本書のハイライトだと思います。

さて、文系と理系とこの本では区切っているけれど、まったく数学ができない人も論理的に考えることはできるわけです。例えば、論述文の構成、「なぜなら」の説明なども論理的思考を使っている。

直感的な思考の裏には、実は綿密な論理的思考が隠されていたりもする。スーパーで晩ご飯の材料を選んでいる主婦は、冷蔵庫の残り、商品の価格、食べる人数などを瞬時に計算して商品の選択をしたりするわけで、これは高度なプログラミングみたいなもんです。

結局、完全な文系人間や理系人間というものは存在しない。ただ、新しい視点、それぞれの有機的な繋がりを見るには別ジャンルの視点を訓練する必要があるんだなという気にさせられる本です。


【書評】ネット社会の影を突く「クラウド化する世界」


クラウド化する世界
クラウド化する世界

タイトルや帯の煽りからして、てっきりネット上であらゆる仕事ができるクラウドコンピューティングの話だと思っていました。日本版は出版社が売れやすいだろうと思って、流行りだしていたクラウドのイメージを強調したわけだったんですな。

めちゃくちゃ紛らわしい。おかげで、数年前に書かれたクラウドの話だったら今読んでも古いだろうと思っててスルーしていたじゃないかと。

■本の概要

本の中身は、電気の登場、パソコン、ネット、グーグルなど、様々なイノベーションによって社会がどう変化してきたか、これからどう変化していくかといった話。今読んでもまったく色褪せない。おもしろい。原題は「Big Swith」。

特に情報社会における検索技術、フィルタリング技術の発達による弊害に焦点を当てているのが、著者ニコラス・スカーのスタンスの模様。この本のおもしろい部分は間違いなくここです!

■フィルタリング技術の弊害?

フィルタリング技術発達により、消費者は自分の好みの商品を簡単にガイドしてもらえるようになった。けれど、同時にそれは機械が消費者の選ぶものをあらかじめコントロールすることになる。

例えば、Last FMという便利な音楽サービスがあります。これは自分の好みの歌手やジャンルを登録すると、自動的に自分の好みにあった歌手や曲をどんどん流してくれる。気に入らなければスキップして、気に入ったものを評価していけば精度が高まっていく。

似たような歌手を発見するのには最高なんですが、まったく違ったジャンルや今まで苦手だったジャンルの開拓はできなくなりがち。まあ、これは当然っちゃあ当然なので、アナログな方法と組み合わせれば問題ない。要はバランスの問題であって、自分の好きなジャンルの開拓は機械を使い、新しいジャンルは別の方法を使えばよいだけな気がします。

これに対してはそこまで大きな問題じゃないかなと思ったり。

■ネット社会が差別を生み出す?

こっちの問題は結構重要。ネット社会は自由であり、一見すると差別がなくなり異なる人種との交流を促進しそう。でも、実際は反対の機能を持ったりする。人間は自分と同じ趣味や考え方を持つ人と付きあいたがる傾向があり、ネット社会をそれを促進する。

ネット上のコミュニティでは自分と同じ考え方、趣味を持つ人を容易に探すことができる。テロリストはネットを使って簡単に構成員をリクルートできる。同じ思考の人間の意見を聞くと、自分の思考がさらに補強され、どんどん偏った考えが強固なものになってしまう。

この部分はなかなか考えるところが多かった。twitterとかは意見のフィルタリングが簡単にできるし、自分の好きな人だけしかフォローもしない。そうなると、どんどん自らの考えが偏っていく危険性はあるかも。

反対に、ネットによっていろいろな人と意見を交換する機会が増え、新しい考えを取り入れる機会が増えているっていう考えもできます。

■総括

この本は最終的にネットの弊害に話を持って行く感じ。著者はテクノロジーの進化に詳しく、それを利用した新しいビジネスにも言及している。それらを踏まえた上でネガティブな部分をどことなく強調しているのが他の本と違いおもしろいところ。

新しいテクノロジーによって失われるものは確かにあるけれど、それ以上に便利なのでそれを人々が利用するのを止めることは絶対にできないわけです。それによって失われたものは、必要なものであればあるほど逆に価値を持つものとして出てくる。

例えば、自然とふれあうのは大昔は当たり前だったけど、今では貴重な体験として商売にもなっている。

ネット社会の進化によって生まれる弊害も、それを補う需要がまた生まれるわけだと思うわけです。個人レベルで重要なのは、弊害を認識してそれに対処する方法も早めに考えておくことかなと。

例えば、本の決め買いはアマゾンを使って、偏りを修正したり大きな視点で見るためにたまにでかい書店を回るのもよいし。音楽も同じ方法が使える。


【書評】家族を悪徳営業マンから守る!「生命保険のカラクリ」


生命保険のカラクリ (文春新書)
生命保険のカラクリ (文春新書)
今回からタイトルをキャッチーにしてみることにしました。飽きたらやめるかもしれません。

ネットベースの生命保険会社を作った著者が、日本の歪んだ生命保険業界の体質を暴くといった内容。騙されて高い買い物をしてしまう家族を守るためと考えると、まあまあ役に立つ。興味がなければつまらない本。

素人が騙されてデカイ買い物をしてしまう金融商品として、不動産、保険、株および投資信託があると思います。これらはかなりデカイ買い物なくせに、感情に訴えやすいので親とかおばあちゃんがコロリと買っちゃいがち。

例えば、不動産だと「やっぱり自分の家がほしい」という感情がでかい。維持費とか、引っ越しできないリスクとか、災害時のリスクとかを考え得ると賃貸のほうがよい場合が圧倒的に多いのに30年ぐらい続く借金して買ったりしちゃう。

自分の場合、不動産、株、投資信託とかはなんとなくわかるけど、生命保険の仕組みはまったく分かってなかったわけです。分かるというのは、専門家じゃない限り手を出さないのが無難だなという程度です。しかし、保険関係は一般人にとってどこまで必要なのかというのがよく分からなかった。

ちなみに、現在の自分に当てはめると、お金がないし妻子もないので問答無用で必要ないわけですが。。まあ、とにかく今の自分にはまったく縁がないであろう保険分野。なにかの間違いで血迷った営業マンが保険商品を売りつけてくるという事態にそなえ、評判よさげなこの本を読んでみた。

乱暴に感想を言ってしまうと。。。

妻子がいるなら生命保険は意味がある。医療保険は日本という国の医療保険制度が手厚いのでほぼ必要なし。健康な場合お金が戻ってくるとか、ボーナスとかが出る保険は詐欺そのものであり、意味なし。自分の貯金が手数料取られて戻ってくるようなもの。

とにかく、保険商品はややこしい。東大、外資コンサルにつとめていた著者でさえ、紹介された時は内容が把握できなかったらしい。そんな複雑な保険商品をシンプルにわかりやすく分けてくれている。それは死亡、医療、貯金の3つ。

貯金の保険商品はまったくもって意味なしだと感じました。これは、保険というベールを使って高額な手数料を奪い取る悪徳金融商品であります。満期になると戻ってくる!とかいうやつ。もっと手数料が安いETFか、リスクの低い個人国債でも買ったほうがよい。

医療型も日本は国の保護が手厚いからあまり必要なさそう。法律で月の医療費は数万円までしか請求してはいけないとか決まっているらしい。会社勤めとか、公務員ならそっちの保護がいろいろとあるからなおさらいらない。

死亡型。これだけは妻子がいて、一家の稼ぎ手が死んだ時の貯蓄が足りない若い家庭には意味ありそう。将来に貯蓄できるであろうお金を担保するという意味で、時間を買う効果があり。ただし、ひたすらシンプルな掛け捨て型を。

どんな金融商品にも当てはまるかもしれないけど、シンプルなものが一番余計な手数料が潜んでなくてよい。複雑になったり、特典がつくほど悪徳商品の危険が高くなる。

ちなみに、わたくし、金融商品の9割は手数料をふんだくる悪徳商品だと思っておりますので、やや過激な物言いになっているのをご勘弁ください。

で、この本を読んで「さあ、悪徳セールスマンから家族や友人を理論武装して守るぞ!」と思ったとしても、そうは上手くいかないと思います。なぜかというと、結局、マンション購入の時の悪夢、「やっぱり自分の家がいいもん」の一言のように、感情で押し切られる可能性が大だからです。

「この本読んで!」と言って本を渡しても、こんなつまらなさそうなタイトルの本、よっぽど興味がないと誰も読みません。

そこで、感情に訴える一番有効な手を考えました。

「あの保険会社は、サブプライムローンで潰れた大手の系列だから、潰れちゃって不払いの可能性が高いよ!」

これです。これが一番キクはず!

と、本の知識が役にたったのか、たってないのか分からないオチになりました。


【書評】超ヤバイ経済学 superfreakonomics


拷問読書 拷問読書
ヤバイ経済学の続編を洋書で読んでみた。訳書はまだ出てないので邦題を勝手に予想。(邦題が出たので、もっとヤバイ経済学から修正)

この本は、奇才の経済学者が身近な事柄を経済学的な視点から研究していく内容。
前作も最高に面白かったけど、今作のほうが面白い。アメリカのアマゾンの評価では「前作ほどのインパクトがない」とかいう評価もあるけれど、奴らはまったくもってわかっておりません。

音楽アルバムでも、たいていデビュー作が一番よいということはあるけれど、この本に限っては続編でもパワーが落ちてない。単純に「人間はインセンティブで動く」という同じテーマを扱っているので、始めて読んだ時ほどの感動が薄れてしまっているだけじゃないかと。そうに違いない。今作も間違いなく面白い。

前作の「ヤバイ経済学」では、「相撲で八百長はあるか?」とか「米国のある州における犯罪率低下は中絶合法化が一番効果的だった」とか、面白い内容を数字を使って解き明かしていく内容でした。著者たちはどうせ売れないだろうと思って書いたら、予想外に全世界で馬鹿売れしてびっくりしたとか。この本の影響でやたらとインセンティブを発言の中で連発しちゃった恥ずかしい過去を持つ人も、僕以外にいるはずです。

今作でも章ごとに読んでて面白いトピックを扱っている。中でも面白かった部分を絞ると以下の3つになります。

1 女が男に比べて平均賃金が低くなる本当の理由
2 温暖化を地球工学で効果的に、安く解決する方法
3 飲酒運転と飲酒して歩いて帰るのは後者のほうが死亡率が高い

1では、現代において男女差別よりも、女性にとって子供が重要だという部分のほうが大きく影響しているという話を数字を使って分析していく。

2では、地球温暖化のために重要だと思われている数々の事柄の誤解。そもそも地球の気温変化に人類の影響はあるのかなどから始まる。ここらへんは珍しい言説ではないかも。面白いのが人工的に大気中にスモッグみたいなものを発生させて、若干の大気汚染と引き替えに一気に地球を冷やす方法など。

3では、飲酒した後に車を運転した場合と歩いて帰った場合、後者のほうが死亡の危険性が高いという驚きの数字を出してくる。チャイルドシートが逆に死亡率を高めるリスクなど、常識をぐらぐらと揺さぶってくる部分。個人的に一番面白かった。

前作でも今作でも、経済学という一見とっつきにくい学問を「わかりやすく」「面白く」「深く」という視点で紹介していく著者たちの姿勢は最高です。学者だったらもう少し遠慮するんだろうけど、とにかくセンセーショナルな書き方をしようという姿勢がいい。あまりやり過ぎると売るためのポーズに見えるかもしれないけど、経済学なんて元々一般ウケしない分野だからこれぐらいやったらちょうどいいと思います。

科学、数学、経済学、哲学とか、なかなかおもしろさを伝えにくい分野でこういう本がどんどん出てくると学校の先生は楽なんじゃないかと。


【雑記】70%ほどの記事を手動で復旧しました


データ復旧はめんどくさいけれど、今まで書いた書評がもったいないということでやっぱり復旧してみました。

やり方はGoogleのキャッシュに残っているものを手動でひたすらコピペ。マウスとキーボードのショートカット、ATOKの変換機能、一番速いブラウザGoogleChrome、24インチディスプレイなどを駆使。超絶スピードでやったらなんと2時間ぐらいでだいたい元に戻った。

あらためて考えるとつまらなかった本とかはスルーしましたが、70%は元に戻ったんじゃないかと。バンザイ。

しかし、こういった単調作業はひたすら反復するだけで生きた心地がしない。これから生きていく上で可能な限り避けたいなと思いました。