【書評】思いやりはお金に換算できる!?


拷問読書今週のノルマ4冊目。累計42冊目。思いやりといった人の感情や環境保護という倫理的になりがちな事柄、これらの経済的な価値を説明してくれる面白い本。これは環境経済学という新しい分野らしい。

この本の面白いのは「思いやりを持とう」とか「地球を守ろう!」といった通常であれば感情に訴えかけられることに対し、経済的な視点から合理的にそれらの価値を検証しているところです。難しい専門用語もなく、なぜか関西弁が混じる文体で読みやすい。

「思いやりも優しさもその効果をお金に換算してみましょう。意外にも、思いやりのある方法を選んだほうが食えたりしまっせ。利益一筋、冷酷にやるより逆に儲かりまっせ~」

こんな感じのノリの本です。

本書では周りの人間や環境によいと思われるたくさんの事柄をお金という尺度を持って説明しています。ECOとか倫理的な説教が嫌いな人でも、お金という誰にでも分かる尺度を使って説明しているので説得力があるのではないでしょうか。最近流行りのCSR(企業の社会的責任)の考え方にも近い部分があります。

●酔っ払いは経済効果を下げる

有名人を街中で見ると得した気分になる人達が増えて経済効果が上がります。酔っ払いが電車内にいると周りが迷惑して経済効果が下がる。前者が外部経済、後者が外部不経済です。環境経済学ではこの外部経済が増えるように経済モデルを考えます。

他にも、短期的な利益を追求して環境を破壊してしまうと、そのために空気が汚れたり公害が発生して人が住みにくい土地になった時の経済損失は計り知れません。この単純な事柄を感情で訴えるのではなく、お金に換算して理解しやすくするのが環境経済学のよいところだとこの本では書かれています。

この考え方は納得できるものなのですが、自分としては直接のペナルティがないと人間はなかなか動かないと思うのです。経済学的に環境保護を考えるのは持続可能な社会を作る第一歩にはなっても、決め手にはならないのではないかと。

例えば、タバコのポイ捨てをすれば街の景観が失われるので経済的にマイナスです。それを掃除するために掃除屋さんを雇わないといけない。そのお金は税金でまかなわれるので結局は自分達の税金に返ってくる。この流れは理解できてもポイ捨てはなかなか無くなりません。それは直接自分に害が回ってこないからです。

でも、自分の部屋でタバコをポイ捨てする人はいません。これは自分の部屋に捨てると自分が困る。友達の部屋で捨てる人もまずいない。「オイ、コラ」と言われちゃいます。高級レストランで捨てる人もいません。「お客様。。。」となっちゃいます。

自分としては、街の景観維持を民間にまかせて罰金を取るようにするとよいんじゃないかなあと思っています。この考えは、「不道徳教育」という本で書かれていました。ちなみにこの本は恐喝者、悪徳警察官、闇金融といった不道徳な輩を合理的な考えで擁護する最高に面白い本です。

●ボランティアはやめよう

この本で一番面白かった箇所がここです。著者は無理のないものはみんなでやればいいと書いているのでボランティア自体を否定してはいません。でも、ボランティアの人達はやがて息切れし、最後は対価のある活動に移らざるをえないと。

結局は、よかれと思ってしている活動でも長続きするには働いた分の対価をもらうことが大事だと書かれています。つまり、無理してボランティアはしてはいけないと。

まあ、ボランティアをすることによって精神的な満足を得られたり、新しい人と出会えたり、自分の勉強になることだったりするとそれはそれで対価だと思います。でも、最初はそれだけでもよいけど続くかとなるとむずかしい問題。そういう意味でなかなか納得させられました。

ちょっとこの本のテーマとする部分とは違ったことばかり書いてしまいましたが、本書の内容は「持続可能な環境」、「思いやり」といったことの経済的価値を説明する本です。この本を読むと「人の思いやり」などの価値を考え直すことができるので、普段何気なく享受している事のありがたみが実感できます。


【書評】スパークする思考


拷問読書今週のノルマ1冊目。累計40冊目。著者はボストンコンサルティンググループの日本代表を務めたこともある内田先生。僕が通っている早稲田大学でも「市場競争戦略」を研究課題にゼミをしていて、今年の秋にぜひ入りたいと思っていたので最近出版された本書を読んでみました。

この本は「いかに学んだ知識を生かすか」ということがテーマ。世の中には情報管理術のテクニック本などが溢れていますが、この本ではあえて整理せずアナログを重視したほうがよいと書かれています。

著者は東大の工学部を出ていて昔からIT系の分野にも見識が広く、学生時代からあらゆる情報活用術を試してきた結果、アナログ的な手法が最も効率が良いという結論に達したようです。

●情報は整理するな、覚えるな

「情報活用に力を入れすぎると情報に翻弄される。インプットに10の労力を使っても、アウトプットには1か2しか活かせない。その割合を何とか逆にしたいと考えた。つまり、インプットの労力は1か2で、アウトプットは10できるという情報収集、活用術だ。」

この方法は何かというと、単純な話で「問題意識」というものを持つことらしいです。さらに、思い出せない情報はたいした情報ではないと本書では言い切っています。自分にって重要な情報であれば自然と頭の中のどこかに引っかかり、何かの拍子にまたよみがえってくると。

何かのきっかに頭の中に入れた情報を熟成させ、自分なりのデータベースから思考をスパークさせて新しいアイデアを生ませる。この非常に単純な仕組みを意識することの必要性が本書の肝となる主題です。

手段と目的が逆転してしまう現象は世の中のあらゆる場面で起こっていることだとは思うのですが、それに対する有効な処方箋にもなる話でした。

これは、日露戦争で活躍した日本海軍における名参謀、秋山真之の読書法と似ている部分があるなと思いました。この人はひたすら海軍作戦に関する本を乱読し、印象に残った部分は自然と記憶しておくからほとんどの本は捨ててしまうらしい。たまに強烈に印象に残った部分はメモを取るがそれもよく紛失するとか。

●情報を熟成するために

本書で紹介されている方法は、「人に話してアイデアを育てる」、「書きながら考える」、「実践できるものなら試す」などです。とにかく実行が簡単で単純な方法を意識して行うことが書かれています。要は頭の中にいれた情報を熟成させてひらめきを得る、これができればなんでもよいということなんだと思いました。

●本を読み終わった後にすること

最近本を読み終えた後に個人的に実践していることが、「読み終えた後に印象に残ったことはなんだろうか」と頭の中だけで考えることです。読み返した後に特に思い返すことがなかった本はそれほどよくなかったんだなと考えています。

この本のいいところは、情報を暗記しようとがんばらない姿勢というかいい意味でのいい加減さを推奨しているところ。それよりも、どれだけ問題意識・興味を持って日々の生活を送るか、あらゆる場面で得た情報をどうやって活かすかを考えることに重点を置くという部分。

ちなみに、本書を読んで感じたことは「重要な要点は自然と覚える」、「得た情報を熟成させることを意識する」など。

●それならば、要点だけを読めばよいのか?

本を読んでいて本当に重要な部分は数行だけだとよく言われます。確かにそのとおりで、他の箇所はその数行を説明する事例だったり、考え方だったりします。ただ、自分としてはいわゆる「まとめ」だけを読んでも要点を理解することは難しいと最近思うわけです。

もちろん、今まで似たような本を多数読んでいてだいたい言おうとしていることが分かってしまうというような時は別なんですが。

例えば、最近読んだ「ゴール」というビジネス書の制約理論はもっとコンパクトにまとめてくれている解説HPなどがあります。でも、それだけ読んでも馬鹿なのであまり記憶に残りませんでした。その後、ストーリー仕立てになっていて幾分くどい感じのある「ゴール」を読み終えた後は、少なくとも理論への理解が深まりました。

これは、細かい補足説明やストーリーなども読みうちに重要な部分への理解が熟成させられていくのではないかと思うわけです。

そういう意味で、似たようなテーマの本をあえて数冊読むことの大切さとも本質的には同じだなーと思いました。


【書評】その数学が戦略を決める


拷問読書今週のノルマ6冊目。累計39冊目。データ分析の凄さを実感できる本。コンピュータを駆使したデータ分析による予想がいかに専門家を圧倒するか。この事実が豊富な事例を用いてドンドン語られていき、内容の面白さに一気に引き込まれてしまいました。

本書が良いところは「データ分析最強!」と言っているわけではなく、人間にしかできない仮説の重要性と統計分析を組み合わせる必要性を強調しているところです。さらにはデータ分析がおちいりやすいゴミデータの問題にも言及しています。

ちなみにタイトルは「その数学が戦略を決める」とカッチョ良い邦題ですが、戦略の話は特にありません。基本的にはデータ分析の有効性について語っている本。

●あらゆる場所で使用されているデータマイニング

データマイニングとは大量のデータを解析し、その中から見えるパターンを探し出す技術のこと。これが最も使われているのがWEBサービス。アマゾンの本を買うと以前の略歴からその人の趣向を推測して他の本を推薦してくる。

僕が利用している洋楽専門のRhapsodyというオンラインジュークボックスサービスもこれを活用しています。自分の好きなアーティストをクリックすると、その歌手が影響を受けた歌手や、同じような系統のアルバムがズラリと並んで非常に便利。

本書ではグーグル検索からアマゾンまで、あらゆる分野で利用されているデータマイニングの技術が紹介されています。よく考えると携帯電話の予測変換もこの技術が使われていますな。

ただ、こういうサービスに浸りきってしまうと新たなジャンル開拓の時は障害になったりもします。知らない間に趣味や考え方が特定のジャンルに偏ってきて、発想が貧弱に。。なんてことにもなってしまうかも。

そういうわけで、音楽だったらあえてたくさんのジャンルが無作為に流れたり、本でもたくさんのジャンルからピックアップして紹介してくれる機能が逆に必要とされるんじゃないかと。

突き詰めていくと、周りの友達だったり知り合いからの紹介や影響が最も精度が高く、多様性も網羅されているはず。肝心なのはデータマイニングと口コミどちらがいいかではなく、全ての良い部分と悪い部分を理解するのが重要だと思いました。

●データ分析を駆使した素人に敗北する専門家

この本のテーマともいうべき部分。世の中の専門家は長年の経験や直感を信仰するあまり、客観的なデータでの検証を軽視しすぎていると批判しています。その結果、ワインの品質を予想する専門家が、収穫時期の天候を元に品質を分析する分析屋に完全敗北するエピソードなどが面白いです。

長年の経験や権威を重視する代表格が医者。なぜならコンピュータによる分析が医者の経験に勝ることになってしまうと、自分達の既得利権を脅かす存在になってしまうから。

逆に、データ分析の有効性をドンドン取り入れようとするのがビジネスの分野。ここでは有効な手法であれば取り込まないとすぐにライバルに出し抜かれてしまいます。この対比が読んでて面白かった。

データ分析とはちょっと関係ないけど、ここであらためて思ったのが今まで培ったものを否定する必要性。これは自分が当事者になってみたらそう簡単なことではないはず。今まで培ってきた経験による予測の精度がコンピュータにコロリと負けると否定したくもなるってもんです。

ただ、ここで長年の経験による直感とデータ分析を組み合わせることができれば引く手あまたの名医となれるんじゃないかなあと思いました。まあ、実際は政治的要素とかしがらみとかたくさんありそうですが。

●コンピュータにできない人間の強みは仮説を立てること

「人間に残された一番重要なことは、頭や直感を使って統計分析にどの変数を入れる、入れるべきでないか推測することだ。」

いくら統計分析が優れた手法であってもそれをどの場面で使えばよいか、どのように使えばよいかには人間が考えるしかないということ。逆にいえば、コンピュータが得意な分野はコンピュータに任せ、人間が優位な分野を強めていけばよいと改めて思います。

さらに、統計の元になったデータは適切な過程で集められたデータかどうかもやっぱり人間でないと判断できない分野。

街頭調査ひとつをとっても、質問の仕方を変えるだけで回答者の返答が大幅に変わってきます。このことは以前読んだ「鈴木敏文の統計心理学」でも“ゴミデータが新たなゴミデータを作り出す」と指摘されていた。

今後ますますコンピュータが進化する社会において、人間にしかできないことは何かと考えさせられるよい本でありました。


【書評】ネクスト


拷問読書今週のノルマ5冊目。累計38冊目。著者マイケル・ルイスの「マネーボール」が面白かったので本書も読んでみました。内容はネットの登場によって世間を騒がす十代の天才達を紹介するエピソードが中心。

進化が早いWEB業界において、5年以上前の話なのでさすがにちょっと内容が古い。期待していたわりに本書には「マネーボール」ほどの面白さは感じなかった。ただ、読みながら思うこともいくつかありました。

●情報化時代において、過去と未来では学習スピードの差がどんどん大きくなる

この本のテーマはこれにつきるんじゃないかと思います。オリンピックの歴史を見ても分かるとおり、記録はいつの時代も破られるためにあります。これは人類の能力が向上したというより外部環境が大きいはずです。

例えば水泳競技を例に取ると、それは水の抵抗を少なくする水着の改良であったり、水の抵抗をなくすために波がたたないように特殊設計された高速プールであったり、日々発達していくトレーニング技術だったりもします。

このような様々な要因が改良されていくため、過去の選手と現在の選手はまったく違う土俵で戦っていることになります。だから単純に記録だけで過去の選手と現在の選手を比較できないのは間違いないと思います。

そんな中、インターネットが登場したことによって、過去と現在の学習環境の違いは他の分野の比じゃないような気がします。このネクストという本を読むとそのことについて改めて思い知らされてしまいます。



●過去に例のない天才少年の登場は学習環境の差が大きい

この本で書かれている、天才トレーダー少年、天才法律家少年、天才プログラマ少年はすべてこれで説明できると思う。みんなTVやインターネットがなければ10代でここまでの知識をつけられなかったはず。

簡単な例で英語学習をとっても今と昔ではまったく違います。昔は分厚い辞書をペラペラとめくって単語を調べていたのに、今じゃWEB上のわからない単語にマウスカーソルを合わせるだけで単語の意味が出てきたりもする。昔と今ではまったく学習効率が違っちゃってきます。



●結局は常に新しいやり方を取り入れていくしかない

こうなってくると、自分がネットを定額で使えるようになったのは10代後半だから小さい頃からネット使い放題な奴らには勝てないやとも思ってしまいます。

でも、若い人達は生まれた時からネットがあるから今の20代の人よりもっと速いスピードで学習しないといけない。10年後に生まれてくる人達はもっと便利な仕組みが出来ているはずだから、さらに速いスピードで学習していかないといけない。

環境が変わるのは世の常だと思うので、その時代時代でちょっとだけ周りより先にいくことができればよいのではないかと思いました。

(まあ、それが非常に難しいことだけど。。)


【書評】ザ・ゴール(上・下)


拷問読書今週のノルマ2、3冊目。累計35,36冊目。本書は80年代に発売された本ながら、未だに読まれ続けているという有名な本。工場の業務改善が物語形式になっていて制約理論の知識を小説として勉強できる本です。

●小説形式になっていて読みやすい

一般に小難しい手法を解説するビジネス書は読みにくいものが多いです。その難しい内容をいかに読みやすくするかを考え、本書は小説形式にしたようです。さらに、業務改善のステップごとにすぐに答えが出ず工場長と従業員が一緒に改善策を考える仕組みになっています。

そのため、読者も一緒にどうすれば工場の問題を解決できるか考えるという、ある種の謎解きの要素もあってよくできています。このすぐに答えが出ないっていう仕組みがよく出来ていて、読みながら読者にも考えさせるようにできています。

ただ、「小説としても面白い!」という意見には賛成できない(笑)ビジネス書にまったく興味のない人が本書を読んでも、「なんか小難しくてつまらない」となり、途中で読むのを止めるパターンが大多数な気がします。現にブックオフでこの本を購入した僕の友達がそうでした。

そういう意味で、自己啓発書のイヤラシサがなく、笑いを組み入れた「夢をかなえるゾウ」は偉大だったんだなと再確認。

●その作業は目標を達成するためのものであるか

本書の序盤に企業の目標、つまりゴールとは何かを考えるという主題が出てきます。コストカット、売り上げ目標、生産目標などすべての要素は利益を上げるという目標につながっていなければならないというもの。

小説の中の経理担当も「評価のための評価をしていた」と言って、従来のやり方を根本的に変更する必要性を語る場面がありました。

つまり、目的を達成するための手段が目的化してしまってはいけないというものです。これはいつの時代にも永遠の課題なんだなと読みながら思いました。官僚制度や、公務員制度でも仕事のための仕事になってしまうという問題点がよく指摘されたりします。

この問題は普段生活していく中で、あらゆる場面で出てくる普遍的な問題でもあったりします。例えば、知識をつけて将来自分の役に立つために勉強するのであり、その過程でテストという定期的な評価手段があったりするのですが、テストのための勉強になったりとか。

まあ、受験勉強とか大学の興味ない必修科目とかある意味避けて通れないものもあるので割り切りは必要なんですが。

“手段が目的かしていないか、今している事は何のためにしているかということを定期的に見直すシステムを作るのが重要だなと感じました。”自分は大丈夫だと思っていても、知らず知らずのうちに手段が目的化しがちなものだと思うので。

●制約理論とは?

この本のテーマは制約理論という業務改善理論です。これは、業務プロセスにおいてボトルネック(足手まといの部分)を見つけ、そのパートを徹底的に改善することが全体の効率を上げることにつながるというものです。

たくさんの分業で成り立っている生産工程において、一箇所でも遅い部分があると常にそこで生産が詰まってしまう。そのため、他の部分がどれだけ速くてもその一箇所が全体のスピードを決定してしまうといった考え方です。

これは、鎖で一部分でも弱い部分があれば、その弱い部分が鎖全体の強度を決定してしまうという例え話でも説明されていました。

これだけ聞くと簡単に聞こえますが実際はそこまで単純ではなく、全体最適化に到達するまでの複雑なプロセスが本書では解説されています。例えば、ボトルネックを改善する過程で新たなボトルネックが出てきてしまったり、そもそもボトルネックを見つけるにはどういう評価基準を用いて判断すればいいかなどです。



●部分最適化も全体最適化に繋がらなければ逆効果となりうる

この本で面白かったのがこの箇所です。ボトルネックとなっている部分以外の部門を常に働かせることによって新たな在庫が生まれ、全体にとってマイナスになってしまっては意味がないという考え方。

つまり、そもそも「足手まとい」となっている部門のスピードを速めないと全体のスピードが速くならないのに、他の部分がドンドン先に進んでしまってはいけないといった考えです。

この小説の主人公が工場長を勤める工場では従業員を休ませるのはいけないということで、非ボトルネックを担当する人員を常に動かしていたため上記のような問題が起こっていました。

この、リソースの最大活用が全体最適化とは限らないという考えは一番面白かったです。

ちなみに、本を読んだ後に理論の理解を深めるのに最適だったのがこのHPです。

http://www.pcatwork.com/30Biz/71392/ (pcatwork)


【書評】選挙のパラドクス-なぜあの人が選ばれるのか?


拷問読書今週のノルマ1冊目。累計34冊目。去年の大統領選挙前に発売された、ウィリアム・パウンドストーンの一番新しい本です。パウンドストーンの本はどれも面白いですが、この本も当たりでした。

この本は政治にそこまで興味がなくても抜群に面白い。なぜかというと、今まで平等の象徴と思われてきた投票制度自体に疑いを持つことができるからです。

この本は「一人一票の制度は衆愚政治につながるからよくないね」とかいうそうたぐいの本ではなく、選挙制度自体の穴により、大多数が望んでいない人が選ばれてしまうという選挙制度の落とし穴についての本です。

●第三候補の影響で、2番手の候補者が当選してしまう仕組み。

分かりやすい例でいうと、2000年の大統領選挙でブッシュがゴアに勝てたのは、ブッシュがゴアより指示されたのではなく、ネーダーという候補者の影響によるものだというもの。

これは選挙における票割れという仕組みです。例えば、ゴアとブッシュが二人で対決するとゴアが55対45で勝つとする。しかし、ゴアとある程度似たような趣向を持つネーダーが同時に立候補すると、ゴアの支持者の55のうち15ほどがネーダー指示に流れ、結果的にブッシュ45、ゴア40、ネーダー15となりブッシュが勝利するという仕組み。

このことから、共和党と民主党が対決する時、共和党陣営が支援してもう一人の民主党候補を出馬させるという不思議な図式が出来上がったりするようです。

●こうなってくると、こんな選挙制度はおかしいという人が当然出てきます。

ということで、もっとよい選挙制度を作ろうとした歴史、その結果作られてきた選挙制度の数々が本書ではたくさん紹介されています。例えば、それぞれの候補者を一騎打ちで対決させる「ランキング式」だったり、票割れ問題を解決するため、一人が二人以上に投票できる是認投票などです。

ただ、より良いものだと思われ作られた投票制度も致命的な欠陥がそれぞれあり、その欠陥のパラドクスの説明が非常に面白いです。例えば、一騎打ちで対決した時にはこのような問題が起こります。AがBに勝利し、BがCに勝利した時でも、AがCに敗北することがあるというようなことです。

●数ある投票制度の中で最もベターな制度は範囲投票らしい。

これはインターネット上でよく見られる投票制度。候補に対して、自分がどれだけ評価しているかを10段階や5段階で評価するというもの。この制度のよいところは投票者の意図を詳しく反映し、自分の嫌いな候補者を落とそうと戦略的に投票しても意味がないといった仕組みです。

ただし、これは複雑だという理由などから実際の投票制度ではなかなか採用されてない模様。ネット投票が一般的になれば将来実現するかもしれません。

●最近、面白いと思ったのはF-1の歴代優勝者の記録の記事

「メダル制なら無冠の帝王モスもチャンピオンに」

F-1の順位がポイント制でなく、オリンピックのようなメダル制だったら歴代の優勝者が大きく違ってきたというようなニュースです。

まあ、メダル制だとその時のドライバーの戦略も変わってくるから一概には言えませんが、どんなものでも順位付けには大きく制度自体が影響するのは間違いありません。

フィギュアスケートでも、最近のルール改正によって韓国のキム・ヨナが浅田真央に勝てるようになってきたという記事もこの前読んだような。。

●結果だけを見ずに、制度そのものを疑う視点を教えてくれる本です

この本のよいところは制度を疑う目を養ってくれるところです。あの人は選ばれたから一番よいのだろうとか、あの人は一番になったから一番努力したのだろうとか、現在使われているから最も優れた制度なのだろうなどといった考え方にブレーキをかけるきっかけになります。

さらにいうと、世の中にあるあらゆる制度がなぜ出来たのか、なぜ改良されていって現在のシステムになったのかなどを考えるきっかけにもなります。


【書評】なぜビジネス書は間違うのか


拷問読書今週のノルマ2冊目。累計32冊目。今年に入って読んだ中で、今のところ一番の本。世の中でベストセラーになっている数々のベストセラーが、いかに跡付けの効果に汚染されているかを明らかにするという内容の本です。特に、ビジョナリーカンパニーを読んだ後に読むと何倍も楽しめる本。

金融市場の世界を中心に、世の中の不確実性を書いた「まぐれ」という面白い本を去年読みましたが、この「ビジネス書はなぜ間違うか」も切り口は非常に似ています。要はビジネスの世界は不確実性で溢れているため、成功法則というものは存在しないという本。

ビジネス書の中でも有名な「エクセレントカンパニー」、「ビジョナリーカンパニー」といった本の数々が、いかにエセ科学でいっぱいかということを説得力のある論拠を元に検証しているところが面白いです。



☆この本でのテーマになっているのが「ハロー効果」。

ハロー効果とは、全体的な業績を見て、それを元に評価を下してしまう傾向のこと。一般的にある会社の業績が好調な時は、その会社やCEOの何らかのやり方が成功の原因だともてはやされます。

例えば、「機軸から離れない」という企業の方針であったり、「常識に囚われない」という方針であったり。自社の得意分野でない業種への参画が成功した場合は「常識に囚われない」という経営思考が成功の秘訣だったと賞賛されます。

でも、もしそれが失敗した場合は、「機軸から離れない」という経営思考から離れてしまったからだと非難されます。つまり、結局は企業の業績が好調か悪化したかという結果から経営手法は評価され、理由は後からどうとでもつけられるということ。

面白いのは、企業のCEOのやり方が終始一貫しているのに、業績の上下によって外部からの評価が180度違ってくるのを指摘している部分です。

企業が成功したり失敗したりする理由は無数にあり、さらには不確実な環境条件、もっといえばその時の運も大きく左右するため、成功法則などというものをピックアップすることは不可能だと本書では書かれています。

☆相関関係と因果関係を混同してしまう罠

ビジネス書でよくあるのは、相関関係を探し出してそこから因果関係を証明しようというもの。例えば、成功している企業は社員の仕事に対する満足度が高いとか。

ただ、社員の満足度を高めたから成功したのか、成功している企業に勤めているから社員の満足度が高いかは分からないんですよ、と説明されています。

結局のところ、厳密な実験を行える物理とは違って、無数の不確実性と相対的な要因、さらには運に左右されるビジネスの世界で因果関係を証明しようとするのは不可能だと書かれている。

☆ビジョナリーカンパニーはダメなのか?

確かに本書が指摘しているように、ビジョナリーカンパニーはハロー効果が大きく影響された本かもしれない。でも、あの本に書かれている企業ごとの事例はいろいろな分野で応用も利くし、あれはあれで参考になるものだったりします。

例えば、芸術の傑作が素晴らしいのは作品の一部分ではなく、作品全体が素晴らしいわけで、すべての要素が進み重なってできていると書いてるところとか。大量のものを試して、うまくいったものを残す必要性とか。

成功法則というものが出てきた時に疑う姿勢が重要だということで、それが自分の前に出てきた状況で参考になるかどうかを考えることができればいいのではないかと。大量に試したくても試せない状況だってたくさんありますし。

☆まとめ

何かが上手くいったり、上手くいっている例を聞いた時は、簡単な理由を追い求めてしまったりします。でも、理由は無数にあって、さらには運の要素も大きく関係します。

この本を読むと、その時々の状況に応じて自分でよくよく考えることの重要性がよくわかる。自分が置かれる状況は唯一無二のものであり、その時々に当てはまる法則は絶対ないと意識しないといけないなと思った。

つまるところは下調べや計画をできるだけ充実させて、実行を繰り返しながらその時々に合ったやり方を探していくという方法が一番ですな。


【書評】キャズム


拷問読書今週のノルマ1冊目。累計25冊目。マーケティング関連の本はまだ一冊も読んだことがないのですが、いきなりハイテクマーケティングに特化した有名な本を読んでみました。この本は、海外のビジネススクールでは教科書となっていて、10年以上売れ続けているらしい。

ハイテク製品のマーケティングにおいての落とし穴をキャズムと呼び、そのキャズムを乗り越える知恵を学べる本。ハイテク製品に特化した本だけど、マーケティングの基本はどの分野でもあまり変わらないと思うのでとても勉強になった。

まず、キャズムとは具体的にはなんぞや?って思いながら読み進めましたが、本を読むとすぐに分かります。本書ではハイテク製品の顧客を5種類にまず分けている。

その5つはイノベーター(ハイテクオタク)、アーリーアダプター(ビジョン先行派)、アーリーマジョリティー(価格と品質重視)、レイトマジョリティー(みんな使っているから派)、ラガード(ハイテク嫌い)。

ハイテク製品のマーケティングにおいて、どの顧客層にどのタイミングで売り出していくかの重要性が本書ではかなり詳しく書かれている。例えば、製品売り出しの初期段階ではまずイノベーターに的を絞り、次にアーリーアダプターに受け入れられるように力をいれるというようなもの。

つまり、ハイテク製品の売り上げが伸び悩むパターンは、ある顧客層から別の趣向を持つ顧客層に製品をスムーズに受け入れてもらえない場合がほとんどだというもの。(キャズムを超えられない製品)

例えば、電子ブックという新しい製品があるとする。ハイテク好きのイノベーターは新しいもの好きなので、扱いが多少難しく価格が高くても買ってくれる。イノベーターが注目した製品に心引かれたアーリーアダプターは、将来性を期待して購入する。

ただし、この後に続く顧客層であるアーリーマジョリティーは何よりも価格と品質を重視するため、その製品が具体的に自分の生産性向上に直接役立たなければ購入してくれない。この後の、レイトマジョリティーはその製品が業界標準となっていなければ購入しない。

こんな感じである顧客層に受け入れられた後でも、次の段階に進むにはまったく別の顧客層に受け入れられる必要がある。そのため、そのキャズムを超えるには今までと違うマーケティングをそのたびに実践する必要があると書かれています。

P18

このプロセスを進めていく際、それぞれの段階でとらえた顧客グループを、次の段階の顧客グループを攻略するための先行事例として活用することが重要となる。

まずは攻略しやすい部分から攻め、その事例を利用して次の段階にレベルアップしていくというのは別にハイテク製品でなくても通じるはず。例えば、プリクラとかたまごっちも中高生の間で最初は流行り、他の世代にも浸透していったりした。

こんな感じで、「ふむふむ、なるほどなー」と思いながら読んでいたんですが、別にキャズムをあえて超えないマーケティングもあるんではないか?と思ったりしました。この本ではキャズムを超えるのは当然のことで、超える方法が書かれている。

だけど、超えるべきでない製品とか、あえて超えずに一定の利益を安定して出し続ける戦略とかは特に書いていない。マニアックな内容でマニアに人気だった漫画が大衆化してしまい、中途半端な内容になって自滅したパターンはよくあると思うけど、同じ例はハイテク製品には当てはまらないのですかね。

P91

先行事例がないということは、これから新たな市場を対象にしようとするときの致命的な問題となる。

この先行事例を作るために、顧客層をステップアップして作っていくと書かれています。プロサッカー選手がビッグクラブに入るまでの道のりと似たようなもんだろうか。

P123

キャズムを超えようとするときには、顧客の数でターゲット・マーケットを決めるのではなく、顧客が感じている痛みの大きさで決める。

マーケティング全般に言えることだと思うんですが、無知な自分には新しい考えでした。つまり、ニッチ市場を探す時に期待顧客が少なすぎるからといってすぐに諦めるのは早いと書いている。その潜在顧客の悩みが大きければ大きいほど、解決した時の爆発力も凄まじいんだよと書かれています。

P224

初期市場では競争相手の存在は必須ではなかったが、メインストリーム市場ではそうはいかない。そこで、自ら競争を作り出す必要に迫られる。

マニアには製品のよさはあまり説明しなくても分かってもらえる。でも大多数の人には比較となる製品が必要というくだり。人は比較する材料があって初めて価値が分かるということが改めて思い出された箇所。

漫画で強そうなキャラを登場させ、最後のページでそいつをボコボコにする本命の敵キャラを出すのは比較することによって強さを際立たせるわかりやすい手法だったなと思い出した。

この本で書かれていることはマーケティング全般に通じるはず。基本は、攻略地点を決定し、侵攻部隊を集結させ、戦線を見定めて、作戦を実行という手順。この一連の流れを顧客層の変化に伴い繰り返す必要性を説き、その手法を具体的な例をもちいて詳しく書いている名書でした。


【書評】ハイエク 知識社会の自由主義


拷問読書今週のノルマ三冊目。著者はブログ界の暴れん坊である池田信夫先生。経済学者のハイエクのことは前々から興味があったし、アマゾンの評価でも導入本として最適とあったので読んでみた。

この本ではハイエクの思想とはどういうものなのかを勉強できるとともに、ハイエクの思想の変化に対しても言及しています。特に、教科書でよく出てくるケインズとの対立にも焦点を当てているので経済史の勉強にもなる。学生が読んだら、本で読んだ知識をもとに、政治経済や経済学の授業で教わることを否定しまくれる嫌な生徒になれるかもしれません。

また、金融市場の不確実性を扱った「まぐれ」という本の考え方も登場して、ハイエクの考え方との類似点も出てきて面白い。

ちなみにページ数は200ページほどなので、「こりゃすぐに読み終わるな♪」と思ってたら、専門的な内容が多く、ほとんど経済史の教科書みたいな本だというトラップ。無知な自分は読み進めるのに時間がかかった。

当時はケインズほど評価されず悔しい思いをしたハイエク先生ですが、現代社会で起こる経済状況を予言していた部分が多く、近年再評価されているらしい。しかし、予言と聞くとどうも身構えてしまう。どうとでも解釈できる部分を後付けして、マガジンのMMRみたいに「予言は本当だったんだよ!」とか書いてないだろうなと注意しながら読み進めていきました。

長期的にみて市場は合理的に動くので政府の介入を禁止するべきだという、“合理的期待派”とハイエクの違いを述べている部分がここ。

P46

しかしハイエクと合理的期待派の間には、根本的な違いがある。ハイエクは、個人が合理的に行動することも完全な情報を持つこともありえないと考えた。そして、不完全な知識しかもたないがゆえに不確実性をともなう個人の行動をコーディネートするしくみとして市場をとらえた。

高校の時は、「そうか、ニューディール政策で政府が介入したおかげで不況は解消されたんだな。なるほど。」としか思っていなかった。でも、その後、市場原理主義というかリバタニアン的な考え方も知って、「そうか市場は合理的だから市場に任せるほうがいいんだ」とか思ったりもしました。

このことは、ウォール街のランダム・ウォークの市場は合理的に動くという考えとも通じるものがある。でも、人間は必ずしも合理的に動くわけでもないし、みんなが同じ情報を持つわけでもない。

そんな感じで自分の考え方も変化していったんですが、ハイエクさんも当初は政府の介入は少なくするべきだという傾向が強かったらしい。その後、政府の役割の重要性をもう少し強調するようになっていったとこの本では書いている。

多かれ少なかれ、政府が市場にどの程度まで介入するべきかっていうのが経済学者の間で議論が分かれるところなんだろうと思う。たぶん、「ここは政府がするべきだと思うよ、うん」とか、「いや、それは市場に任せないとだめだよ、君。」とか言っているんだろう。

こんな感じで、自分自身もいったいどういう理論がいいんだろうって毎回悩んでいるわけですが、このハイエクの考え方はいまのところ一番しっくりきます。

前回読んだ「囚人のジレンマ」のしっぺ返し戦術について書いているパートも説得力があり面白かった。しっぺ返し戦術とは、悪いことをするとお返しされるので正直が最良の戦略だというもの。

P139

この結果は大きな話題になり、「正直が最善の戦略」の例として、今でもよく引用されるが、これは都市伝説である。この実験は、同じ相手との一対一のゲームを繰り返すという特殊な形で行われたもので、多くの戦略をいっせいに競わせる実験では、無条件に相手を裏切り続ける「邪悪」な戦略が強い。

裏切った相手と二度と会わない大都市で犯罪が増えるのと同じだ。いいかえれば、メンバーの利害が一致しない社会では、進化によって自主的秩序が形成されるという根拠はないのである。

こんなわけで、人間がみな合理的に動くと社会が崩壊してしまう。正直者が馬鹿をみるような社会にしないように、警察や刑務所ができて、秩序を維持するために宗教ができたと。

宗教っていうのは戦争の原因になってばっかりじゃないかと子供の頃は思っていたんですが、最近経済学的な立場からの宗教の誕生の合理性を勉強すると、宗教に対する見方が変わってきました。

確かに、子供にゲーム理論から教えて、「みんなが邪悪な戦略を取ると社会秩序が乱れて、結果的にみんなの利益にならないよ」とか教えても「ハア?」って感じだと思う。

そうなると、「神様の教えに従いなさい」とかいう倫理観を教える道具があったほうが便利で手っ取り早い。

その他にも、著作権の過剰な保護はイノベーションを阻害するという部分の根拠や、ハイエクの考える自由権に対しての説明が特に面白かった。

経済学の理論はその時の時代に一番マッチしているものが評価されるもんなんだろうなとこの本を読んだ後の感想。

現代において否定されているケインズの理論だって当時の世界情勢にはマッチしていた。ハイエクの理論が現代の社会を説明するのに適当だとしても、将来にも安泰だとは限らないなあと思ったしだいであります。


【書評】ビジョナリーカンパニー


拷問読書企業の平均寿命は約10年と言われています。そんな中、世の中には幾多の試練を超え、長期にわたって繁栄し続けている会社があったりする。その企業をビジョナリー・カンパニーと呼び、共通点を研究した本。今週のノルマ三冊目。

この本によると組織が長い間生き残るため、もっとも重要なものは、技術でもなく、アイデアでもなく、カリスマ的な経営者でもなく、豊富な資金でもなく、組織に浸透した理念だというのがこの本の基本的な主張。

面白いのは、この本で紹介されるビジョナリー・カンパニーの中には、当初素晴らしいアイデアが特にないのに会社をおこした企業も多かったということ。

以下、印象に残った点をピックアップ。

P13

決定的な点は、理念の内容ではなく、理念をいかに深く「信じて」いるか。

確かに、非合法な裏社会で成功する人にも何か強い理念があるような気がします。どんな分野でも飛び抜けた存在の人には理念があるかもしれない。

P14

あとから見れば、実に先見の明がある計画によるものに違いないと思えても、「大量のものを試し、うまくいったものを残す」方針の結果であることが多い。

これは種の起源の概念とまったく同じですな。振り返ってみると、自分が受験勉強した時もいろいろな勉強方法を試しまくりました。記憶が定着しやすいは寝る前だとか、忘却曲線にそって復習をするとか、朝には数学系をやればいいとかいろいろ本には書いてありました。

でも、一番自分に合っている方法がなにか自分にしか分からない。それを探すにはたくさん試して試行錯誤するしかなかったりします。その結果、他人にとっては馬鹿げたアイデアでも自分にとってはベストな方法とかが見つかったりします。

ちなみに自分の場合は1ページづつ問題集を破って、一番リラックスできる状態(寝ながらとか)で読んでいく。というやり方でした。現時点で自分に一番向いてる勉強方法は、「ストレスがかからない、継続できる方法」だと思っています。

P46

ビジネス・スクールでは、経営戦略や企業に関する講義で、何よりもまず、すばらしいアイデアと、綿密な製品・市場戦略を出発点とし、次ぎに、「機会の窓」が閉まる前に飛び込むことが大切だと教えている。しかし、ビジョナリー・カンパニーを築いたひとたちは、そのように行動したわけでも、教えてわけでもなかったことが多い。

重要なのはあきらめないことであり、あきらめないのは会社である。アイデアはあきらめたり、変えたり、発展されることはあるが、会社は絶対にあきらめない。

簡単にいうと、絵に描いた餅より、アイデアはしょぼくても実行する熱意がもっとも重要だということですな。

P115

重要なのは、企業が「正しい」基本理念や「好ましい」理念を持っているかどうかではなく、企業が、好ましいにせよ、好ましくないにせよ、基本理念を持っており、社員の指針となり、活力を与えているかどうかである。

理念のない会社は駄目だと本書には書かれています。理念だけあっても、浸透して実行されていなければ駄目だとも書かれている。

P116

人々はある考え方を公言するようになると、それまではそうした考えをもっていなくても、その考え方に従って行動する傾向が際だって強くなる。

本当に実現したいことは、まわりの人に公言して、紙に書いて、その誓いを忘れないように毎日暗唱しろ!ってよくある啓発本にも書いてありますね。

P155

本物の目標は明確で説得力があり、集団の力を結集するものになる。そういうものは人々の意欲を引き出す。人々の心に訴え、心を動かす。具体的で、わくわくさせられ、焦点が絞られている。誰でもすぐに理解でき、くどくど説明する必要はない。

ケネディが言った「月に行く」という目標がよい例として書かれています。具体的でイメージしやすいものは相手に伝わりやすいですな。

数年前、僕は自分のサッカー好きをアピールする時に「マンUの試合を全試合見てます!」

と言ってました。これは「海外サッカーの大ファンです!」より分かりやすく具体的なんじゃないかと思って使った方法。まあ、最近は忙しくて試合が見られないので使えませんが。。

P363

ビジョナリー・カンパニーの素晴らしい点をひとつ指摘することなどできない。重要なのは驚くほど広範囲に、驚くほどの一貫性を、長期にわたって保っていくことである。優れた芸術作品が傑作だといえるのは、作品全体が素晴らしく、すべての要素が積み重なってできあがった全体的な効果のためである。

小さなことにこだわり、細部まで理念を浸透させることで全体が輝くということが書かれています。

P375

基本理念は、「つくりあげる」ことも「設定する」こともできない。基本理念は見つけ出すしかない。内側を見つめることによって、見つけ出すのである。基本的価値観と目的は心の奥底で信じているものでなければならず、そうでなければ基本理念にはならない。

人からの受け売りとかじゃなくて、自分が一番信じられる理念を考え抜いて見つける作業が重要ということですな。

ちなみに、この本に書かれているビジョナリー・カンパニーはどれも何十年も生き残ってきた企業ばかり。なので、初代の経営者が引退しても企業精神が後継者に生き残っている組織を選び抜いています。

経営者個人ではなく会社自体に理念が強く浸透していて、後継者を育てる努力は、企業が長期に渡って生き残るのには不可欠なことと書かれている。このことから興味深いのがアップルの将来。

最近、アップルのスティーブ・ジョブスの健康が不安視されています。ジョブスが追い出されたアップルは業績が悪化した過去があるだけに、ジョブスが引退したらどうなるんだろう。

アップル社員には「ジョブスだったらどうするだろう?」という考え方が浸透していると言われていて、ジョブスが引退した後も大丈夫とアップル側は言っていますがはたして。